中小企業診断士とビジネスコーチング② 基本スキル:傾聴

こんにちは、柴山です。

今回はタイトルの通り、コーチングの中で最も基本となるスキル「傾聴」についてです。

なお、そもそもコーチングとはなんぞや?という方は過去記事を参照してください。

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まずはとにかく傾聴から

過去記事で書いた通り、コーチの役割は自分の考えでクライアント(相談者)を説得したり、論破することではありません。

コーチは質問を投げかけることにより、クライアントの気付きと成長を促します。コーチングはクライアントの自発的な意思を尊重するものなので、まずはクライアントの考えを聴くことを重んじる、それが傾聴です。

こう書くと、

傾聴?
要は聞くだけでしょ?
簡単じゃん!

という方もいるかもしれません。そこで下記の会話例を2つ比べてみてください。

聴いてる?聴いてない? 2つの会話例

会話例①
クライアント:最近、仕事のストレスが溜まっていて、毎日憂鬱なんです。

コーチ:ああ、ストレスね。私も昔はよくありましたよ。そういう時は趣味を見つけるといいですよ。私の場合はジョギングを始めて…

クライアント:でも、私の場合は…

コーチ:いやいや、運動は本当に効果がありますから。まずは軽いウォーキングから始めてみてはどうですか?

会話例②
クライアント:最近、仕事のストレスが溜まっていて、毎日憂鬱なんです。

コーチ:仕事のストレスで憂鬱を感じていらっしゃるんですね。もう少し詳しく教えていただけますか?どのような状況でストレスを感じますか?

クライアント:上司からの要求が高くて、常にプレッシャーを感じているんです。

コーチ:上司からの高い要求がプレッシャーになっているということですね。そのプレッシャーについて、具体的にはどのようなことを感じていますか?

クライアント:自分の能力が足りないんじゃないかと不安になります。

コーチ:なるほど、能力への不安もあるのですね。その不安に対して、あなたはどのように対処したいと考えていますか?

見ての通り、2つの会話例はスタートラインこそ同じですが方向性が全く異なります。

会話例①ではコーチは自分の言いたいことを言っているだけで、相手の話を聴いていません。なぜこうなってしまうのでしょうか?

人は誰でも他人から頭が良いと思われたい?

もしかしたら例外的な人もいるかもしれませんが、ほとんどの方は人から馬鹿だと思われたくない、天才とまではいかずとも頭が良いと思われたいはずです。(少なくとも話を聴く価値がある人物と思われたい)

そのため人から相談されると、相手の話を聴く前に

俺はこんなことを知ってるんだぞ!
こんな体験もしてきたんだぞ(武勇伝)!
どうだ!凄えだろぉぉぉ!(ドヤァ!)


みたいなことをついつい語りたくなってしまうのではないでしょうか(いわゆる承認欲求)しかし、あくまでコーチングの主役はコーチではなくクライアントです。

クライアントに「あの人のコーチングを受けてみて良かった」と思われることなく、コーチが勝手に優越感に浸って気持ち良くなっているだけであれば、それはもはやコーチングではありません。

特にクライアントの相談内容が、自分の知っている分野であった場合こそ、下手に決めつけることなく慎重に聴く必要があります。

コーチングにおける「聴く」と「聞く」
コーチングでは「聴く」と「聞く」を用語として使い分ける場合があります。
聴く…
注意深く、意図的・能動的に相手の感情や意図を理解する行為。
相手の言葉の背景にある思いや感情の理解に努める。

聞く…
受動的に情報を受け取る行為。
相手に対する情報収集のレベルであり、相手に対する理解が浅い

貴方の話をちゃんと聞いていますよ、というメッセージ

クライアントの相談内容は貴方から見て
そりゃ、そういう立場に置かれたなら大変だよな…
みたいに、もっともな悩みであるかもしれません。

あるいは、
自分で解決すべきことを他人のせいにしてるだけでは?
あれもこれも欲しい、というのは欲張り過ぎなのでは?
などツッコみたくなる場合もあるかもしれません。しかし、そういった場合でも相手のことを認めてあげる必要があります。

ここで「相手を認める」というのは、相手の言い分が無条件で正しいと認めるということではなく、そういうことに悩んでいる相手の人格であったり、そう感じている現状を認めてあげるということです。

先の会話例②でのコーチの発言を振り返ってみると、

クライアント:最近、仕事のストレスが溜まっていて、毎日憂鬱なんです。

ここで、もし「いや、貴方より仕事が大変な人が世間にはたくさん…」などと返してしまったら、ぶち壊しです。

重要なのは、クライアントの仕事が客観的に大変なのかどうかではなく、クライアントがそれをストレスに感じていること自体です。

そこで会話例②では

コーチ:仕事のストレスで憂鬱を感じていらっしゃるんですね。


と、相手の言い分をオウム返しにすることで、相手がストレスを感じている現状を肯定しています。

繰り返しますが仕事の量や内容が客観的に大変かどうかは、いったん問題にしていません。何故なら、ある人にとって大したことがない仕事でも、その分野が苦手な人にとっては大変、ということは普通にあり得るからです。

「貴方の話をちゃんと聞いていますよ。私は貴方の悩んでいることを頭ごなしに否定することはしません」ということを伝える方法としては。オウム返しの他に、

相槌:なるほど、そうなんですね 

要約:つまり、○○○○ということですね

特に相手の伝えたいことの情報量が多く、クライアント自身も伝えたいことをまとめ切れていない場合は、要約を途中に挟むことでクライアントの思考を整理する助けになります。

信頼関係(ラポール)の構築とは

クライアントからコーチとしての能力の評価してもらう以前に、人として「あ、この人は自分の話をちゃんと聞いてくれるんだ」という信頼を得なければ、コーチングは成立しません。

こういった信頼関係をラポールと呼んだりしますが、個人的には用語を覚えること自体はコーチングを学ぶ上でそれほど重要ではないと思います。

コーチングの用語をいくら覚えようと、会話例①のようになっては意味がありません。相手のことを自分の先入観で決めつけずに、しっかりと「聴く」こと。まずはそこがスタートラインです。

ということで、今回はここまで。

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