【認知バイアス】不安を煽る「2025年の予言」が気になる心理とは

認知バイアス

こんにちは、柴山です。

最近のネット記事、SNSなどで
2025年に大災害が起こる!
…みたいな『煽り』がチラホラ目につきます。

今回の記事では、こうした「予言と不安」「予言を信じてしまう心理」について、心理学その他の見地から考えてみました。

こんな方におすすめ

  • 心理学とかが好き
  • 陰謀論とかが嫌い
  • 予言の話を知って不安になった
  • 予言関連で不安を煽る人々から、心の平穏を守りたい
  • 災害に対する備えについて真面目に考えたい

こんな方には向いていません

  • 陰謀論が好きな人
  • 世の中はディープステートとか秘密結社が仕切ってると確信している人
  • 自分は光の戦士の生まれ変わりだと信じている人
INDEX

今日からあなたも予言者!「未来予知」を簡単にする方法

いきなりですが、実は「未来予知」・「予言」は誰にでもできます。

やり方は、SNS・ブログ・YouTube動画など、内容が後に残る媒体を使って、

  • 20XX年、世界は核の炎に包まれる!
  • 20XX年、中国経済は崩壊する!
  • 20XX年、日本の年金制度は破綻する!

…みたいに起こりそうなことを思いつく限り発信しておくだけです。

そうすると、そのうちいくつかは的中しますので、あとは…
実は私は今回の事態を●年前に予測していた!
と、騒ぎ立てるだければOKです。

私はこれを「数撃ちゃ当たる!予言大作戦」と名付けようと思います。

実際問題、ここまで露骨なやり方でなくとも評論家、ライターなどの方は色んなメディアで色んなことを発信していますので、これに近いことは起こりえます。

そこで、100の発言のうち1つが「予言」的に成就しただけの人を捕まえて来て
じゃあ、100億円あげるから、
あらためて○○の件に関して予言して!
そんな風にお願いしてみても、今度また的中する確率はほとんどないと思います。
(円高・円安とか、巨人が優勝するとか、ある程度の確率で普通に起こることならともかく)

不安になるからこそ「断言系予言者」に惹かれる?

少し話は外れますが、
常に自信にあふれて即断即決!
というと優れたリーダーの典型みたいに思えて、頼もしく感じる人も多いと思います。反対に判断に迷ったり、時間をかけて検討する人は「頼りなくて優柔不断」に感じるかもしれません。

未来のことを語る人に対しても、これと似たような心理が働きます。

最初に書いたような、

  • 20XX年、世界は核の炎に包まれる!
  • 20XX年、中国経済は崩壊する!
  • 20XX年、日本の年金制度は破綻する!

こんな感じで断言する人に対して

  • 今後30年以内に60%の確率で大地震が起きる

…のように、確率や統計上のデータを元に慎重に発言する人は、頼りなく見えてしまう可能性があります。特にコロナ禍のような、人々の不安が高まっている状況ではそうです。

しかし、前者のような断言系予言者(私が勝手に命名)と、データを元に慎重に発言している専門家(後者)で、どちらが自分の発言に責任感を持っているかといえば、圧倒的に前者です。

言い換えれば、断言系予言者がなぜ未来のことを断言できるかと言えば、その理由は「最初から自分の発言に責任を持つ気が無いから」というのが私の結論です。

例えば仮に、

  • あなたには未来を予知する能力がある
  • あなたには人並みに責任感がある

…という前提だったとします。

そうすると、あなたが未来のことを語るとき、ほんの少しでも不確定要素があれば言葉を選んで慎重な発言をするのではないでしょうか?特に人命に関わる事態であればなおさらそうです。

そう考えると、断言系予言者がどんな方々なのか、これ以上ここに書かなくてもだいたい分かるはずです。

出版業界の困った「界隈」の人たち

この節で書くことは、私が以前にネット記事で見かけた内容を元にしています。元の記事を改めて検索してみましたが、見つけられなかったので記憶だけが頼りです。

それによると出版業界には

  • 中国経済がまもなく崩壊する系の本で儲けている界隈
  • アトピー性皮膚炎にやたらと民間療法をすすめる界隈
  • とにかく「自然のものは体に良い、人工物はダメ」と決めつける界隈

…のような困った界隈がいくつもあり、例えば中国経済崩壊本の方たちは

最近、前に出した本の売れ行きが落ちてきな…
よしっ!そろそろいつもの○○先生に連絡して
新しい中国崩壊ネタで1冊書いてもらおう!

…みたいな感じで出版を決めるそうです。なぜそうするかといえば日本には一定数、中国の繁栄を快く思わない読者層があり、この手の本を出版すればある程度は売れることが分かっているからです。

そこで依頼を受けた○○先生は、「中国経済はまもなく崩壊する」という結論に都合が良いデータだけを拾い上げて、新たに1冊書き上げることになります。

ここでは実際に中国経済が崩壊するかどうかは問題にしていません。
するかもしれませんし、しないかもしれませんが、仮に崩壊したからといって最初から結論ありきで書かれた本の予言を有難がる必要は
無いです。

もちろん、上に書いたようなジャンルの本の全てが怪しいというつもりもありません。ですが、世の中にはそういう意図で書かれている本もあるのだということを、特に若い人には知っておいて欲しいと思います。

そもそも「予言が当たった」とは、どういうことか?

あなたが友人とキャンプに出かけたとします。
出かける前に母親に「いざという時のために絆創膏と消毒液ぐらい持って行け」と言われたので、その通りにしました。たまたま友人が転んでケガをしたので、あなたは消毒してから絆創膏を取り出して貼ってあげました。

すると同行者が
この事態に予め備えてきたとは…
お前たち親子は超能力者か!

と、驚愕の表情を浮かべた…、とはなりません。

皆さんご存じの通り、普通に起こりうることに備えるのは「準備」といいます。そう考えると、「予言が当たった」というためには、合理的には予測できない出来事について事前にきちんと記述(記録)してあることが前提条件です。

ここでの「合理的には予測できない」とは、例えば天気予報では予測できない「空からカエルが降ってくる」とか「何時何分何秒に雷が落ちる」みたいな出来事を指します。つまり普通の人でも考える「そのうち○○が起こるかも」は予言とは呼びません。

また、事前にきちんと記述してあることが必要なのは、「言った・言わない」で揉めたことがある社会人なら誰でも分かるのではないでしょうか?さらに記録にはもちろん具体性が必要となります。

普通に考えて、大勢の人の命や生活に関わることを予言する以上、せめてビジネスの報告書で求められる5W1Hくらいは備えていないとマズイと思います。販売に関わる報告書なのに、ターゲット顧客が「日本の西の方に住んでいる人」としか書かれていなかったら、社長がブチ切れるのと同じことです。

ということで予言が当たった、というためには

  • たくさん予言したうちのごく一部が当たった、だけではダメ
  • 普通に起こり得ることについて「○○が起こるかもしれない」というだけではダメ
  • 何を予言したのか、事前に、かつ具体的に記述されていることが必要
    (そうでないと実際に起きた出来事と後から照合できないため)

このように、後からきちんと検証ができるだけの条件が揃っている必要があります。

人の思考を歪める、心のメカニズムいろいろ

ここからは人がなぜ予言を信じてしまうのか、その原因となっている心のメカニズムについて解説してみます。

確証バイアス:人は見たいものを見る

確証バイアスは心理学の用語です。人間は、自分の予測や信念に合う情報ばかりを集め、反証する情報を無視する傾向があるようです。また「人は見たいものを見る」というのはカエサルの言葉で、確証バイアスを端的に表現しています。※1

身近な例:アイドルの熱烈なファン
推しのアイドルの悪いニュースは、○○さんがそんなことするはずない!のように、考えることなく否定してしまう

「2025年に〇〇が起こる」といった不安を煽る情報は、私たちの記憶に残りやすく、知らず知らずのうちに関連情報を探す行動を強化してしまいます。結果として、私たちはその予言を過大評価し、必要以上に恐れてしまうことになります。

同時に人は「見たくないものを見ない」傾向があるとも言えますので、予言にどっぷりハマった人はそれに対して反論する言説を無視または軽視するようになってしまう可能性もあります。

※1 
直訳すると「人は自分が信じたいと望むことを信じる」の方が正確ですが、日本では「人は見たいものを見る」と意訳で紹介されることも非常に多いです。

フィルターバブル:パーソナライズされた情報の罠

現代のインターネットでは、検索履歴など個人の興味・関心にあわせて表示情報がパーソナライズ(個人向けに最適化)されます。

身近な例;YouTubeの「おすすめ」表示
「EV自動車の問題点」など、特定テーマの動画を見ると、似たような傾向を持つ動画が表示されやすくなる


こういった仕組みのせいで、不安を煽るような予言に一度興味を持ってしまうと、その予言を裏付けるようなネット情報ばかりに触れることになります。その結果、バランスを欠いた考え方が助長されてしまう可能性があります。

確証バイアスとフィルターバブルの相違点と共通点

確証バイアスは個人の心のメカニズムで、フィルターバブルは社会の仕組み(インターネット)がもたらす、という違いがあります。ただ、いずれも極端な意見や誤った情報を信じやすくする原因になる点は共通しています。

ハロー効果:偉い人は正しい?

「2025年の予言」を行う人物が、大学教授その他、特定の分野で権威ある人だったりすると、私たちはその言葉を無条件に信じてしまうことがあります。

これが「ハロー効果」と呼ばれる心理現象です。我々は「予言者」の肩書ではなく、発言の内容に注意を払う必要があります。

バーナム効果:曖昧で一般的な言葉

先にも触れましたが、曖昧な言葉は解釈次第で、どのような出来事にでも当てはめることができます。それによって有名な人物の言葉を、後付けの解釈で予言だと見立てることも可能です。

また、血液型占いや星占いで「あなたは明るく振舞っているが、内面には孤独を抱えている」といった、多くの人に当てはまることを言われただけなのに、「まさに自分のことだ」と感じてしまう可能性が有ります。

このように曖昧性・一般性のある言葉は、最初に紹介した「数撃ちゃ当たる!予言大作戦」と同じように、「実はこの事件は既に予言されていた」(ドヤァ!)の格好の元ネタになり得ます。


ここまで述べてきた心理効果はどれもやっかいです。

中でも特に確証バイアスは、一度ハマってしまうと自分の考えに反することを受けつけられない状態を作り出してしまいます。そのような、ある種の洗脳状態にある人に対して「客観的な事実を説明すればきっと納得してくれるはず」と考えるのは現実的ではありません。このためそういった人とは、可能であれば距離を取る方が無難です。

ここまでで、人が予言を信じてしまう心理メカニズムについてまとめてみました。次に多くの人が予言を真に受けてしまった結果、起こるかもしれないことについて触れてみます。

ピグマリオン効果がもたらす、予言の自己成就とは?

ピグマリオン効果は、「他者からの期待が高まるほど、その期待に応えようとしてパフォーマンスが向上する」という、とっても前向きな心理現象です。教育関係でよく取り上げられる用語です。

元々の由来は、ギリシャ神話に登場する王ピグマリオンが彫った象牙の女性像が本物の人間の女性になったことにちなんで名づけられたそうです。

これだけを聞くと、今回記事にそぐわない明るい話題のようにも思えますが、悪い方向に働く場合もあります。

例として

  • 期待過剰が重荷になると逆効果になってしまう
  • 「こいつは素行が悪い生徒だ」などと決めつけて接することで、生徒の心を歪めてしまう

特に後者については、「ピグマリオン効果」と区別して「ゴーレム効果」と呼ばれることもあります。

シェイクスピア・ギリシア悲劇と予言の関係

文学作品の中には、他者の言葉(予言だったり警告だったり)が、知らず知らずのうちに登場人物の心に影響を与え、
こんなはずじゃなかったのに…
いつのまにか悲劇をもたらす、という構造を持つものが多数あります。

代表的なのは、この2つです。

シェイクスピアの「マクベス」
予言: 冒頭で魔女たちがマクベスに「いずれ王になるだろう」と予言します。
自己成就: この予言を聞いたマクベスは、野心に駆られ、王になるために行動を開始します。王にはなるものの、将来の敵となりそうな人物を次々と殺害したことでかえって敵を作ってしまい、結局破滅することになります。

ソポクレスの「オイディプス」
予言: オイディプスが生まれる前に、「彼は父親を殺し、母親と結婚するだろう」という予言が下されます。
自己成就: 両親は予言を恐れてオイディプスを捨てますが、そのことが皮肉にも彼が予言の通りに行動してしまう状況を作り出します。オイディプスは自分の出自を知らずに父親を殺し、母親と結婚してしまいます。予言を避けようとした結果、予言を実現させてしまう悲劇です。

こういった悲劇が文学作品の中にとどまっているうちはいいのですが、
予言が原因で悲観的になった若者が無気力になり、国が衰退した
となると、洒落になりません。

そこまでの事態でなくとも、特定の商品が不足するという憶測が流れ、買い占める人が増えたため実際に欠品になってしまった、くらいのであれば普通に起こりうることです。

ということで、「断言系予言者」のところで書いた通り、他人にもたらす影響について少しでも責任感があるのであれば、不確定な未来について予言などするべきではない、というのが改めての結論です。
(あるいは外れる可能性もある予測の1つに過ぎない、という前提で話すなど)

未来のことを心配したり、考えたりすること自体は間違ってない

ここまでは「予言で恐怖心を煽るとはけしからん」というスタンスで書いてきたのですが、その一方で、少子高齢化や人手不足など、ちゃんと考えなければならない将来の問題もあります。

そういった問題について、
そのうちなんとかなるだろう
(主に自分以外の誰かの手によって)

と考えるのも、別の意味で問題です。

そこで今度は反対に、ついつい危険を過小評価してしまう心のメカニズムを紹介します。

正常性バイアス:根拠は無いけど、きっと大丈夫!

水害が起こりやすい地域では、大雨のたびに警戒警報などが発せられるため、感覚がマヒしてしまう危険があります。

前回も警報出たけど何ともなかったから、今回も大丈夫だろう…
みたいに思ってしまう心境は、個人的にも分からなくもない(むしろすごく分かる)ですが、やはり駄目です。

こんな感じで、異常なことが起こっているのに危険を過小評価してしまう心理を「正常性バイアス」といいます。

自らの心を不安から守るためのメカニズムなので、これが悪い事とは言い切れないのですが、時と場合によっては命を危険にさらすことになります。

正常性バイアスのその他の例

  • 体調が悪いのに「そのうち治るだろう」
  • 海辺にいて地震があったのに「他の人も避難してないし津波なんか来ないだろう」
  • インフルエンザなどが流行っても「去年もかからなかったし大丈夫だろう」

こうして並べてみると正常性バイアスは交通安全でよく取り挙げられる「だろう運転」とそっくりです。住んでいる地域に関係無く、災害の警報が発せられた際は「かもしれない避難」で対応すべきです。

現状維持バイアス:変化は嫌だ!(面倒くさい)

人が変化を避け、現状を維持しようとする傾向を「現状維持バイアス」といいます。

例えばAIを使えば仕事を効率化できるのに、それに取り組まないなどです。

問題なるのは、やむを得ない事情があって取り組まないのではなく、まず最初に「やりたくない」という気持ちがあり、後付けで「やるべきでない理由」を作り出してしまうことです。つまり、自分で作った理屈で自分を納得させてしまっていることになります。

これは企業における後継者問題など、いずれ深刻になると分かっているのに取り組もうとしない心理につながるかと思います。

不安と正しく向き合うために、見るべきサイト2選

ここで、健全な意思を持って不安に向き合いたいという方のために、災害に対する準備などに役立つサイトを紹介しておきます。YouTubeで予言の内容を確認するヒマがあったら、まずはこちらをチェックしておきましょう。

重ねるハザードマップ

国土地理院のハザードマップポータルサイトで提供されている情報です。地方自治体が作っているハザードマップを統合、デジタル化したもので、自分が住んでいる地域の浸水リスクなどが分かります。
国土地理院 | ハザードマップポータルサイト

東京備蓄ナビ

東京都が防災のために制作したコンテンツです。住んでいる地域に関係無く、世帯人数などを入力すると食料や水など必要な備蓄量を教えてくれます。
東京備蓄ナビ

認知バイアスとどう向きあうのが正解?

今回紹介した、「確証バイアス」・「正常性バイアス」などは、人間の思考や判断に影響を与える偏りの総称である「認知バイアス」というカテゴリーに含まれます。

認知バイアスは、元々ある人間の心のメカニズムなので無くすことはできません。知ったからといって未来のことが分かるようになるわけでもありません。が、そういう心の働きがあることを知っているのと知らないのでは全然違うと思います。

この記事をここまで読んで頂いた方であれば、少なくとも断言系予言者の発言にいちいち振り回されることもなく、これまでより冷めた視点で情報をチェックできるのではないでしょうか?

そんなわけで、最後にまとめてみました。

未来と賢く向き合うために:

  1. 断言系予言者の言葉を真に受けない
  2. 自分の考えと異なる意見にも目を通す
  3. 発言者の肩書を過度に重視しない
  4. ネット媒体に限らず、複数の視点から情報をチェックする
  5. 一方で、将来の為に自分が出来ることは積極的に取り組む
    ⇒予言について調べてるヒマがあったら防災グッズを準備するなど

ということで、今回はここまで。

認知バイアス

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