こんにちは、柴山です。
もうそろそろ限界かも…
職場の同僚に始まり、友人、恋人、時には家族との関係でさえ、そういう気持ちになることはあり得ます
簡単に“切る”という選択はできないけれども、続けるのもしんどい。
そういう気持ちの奥にあるのは、「損をしたくない」というごく人間的な心理かもしれません。今回はプロスペクト理論から人間関係について考えてみます。
今回記事はこんな方におすすめ
- 親族や友人、恋人と距離を置くべきか迷っている
- 職場の同僚との人間関係がしんどい
- 上司がパワハラ気味だが、信頼できる一面もあるので嫌いになりきれない
プロスペクト理論とは?人間関係にも潜む「損失回避バイアス」
「プロスペクト理論」とは、心理学者カーネマンとトヴェルスキーが提唱した理論で、私たちが「利益」より「損失」に敏感に反応する傾向を説明しています。
例えば、1000円を得た時の喜びよりも、1000円を失った時の痛みの方が約2倍強く感じられる。
このような“損失回避バイアス”は、投資やギャンブルの文脈でよく語られますが、実は人間関係にも深く関わっています。
たとえば──
- 値引要求がひどく利益がでない取引先、でも縁を切るのは損な気がする。
- 上司との関係がしんどくても「ここで辞めたら、今までの努力が全部ムダになる」と感じる
- パートナーとの関係が冷めているのに、「積み上げた時間が無駄になる」と思ってしまう
- パートナーが酔うと暴力を振るってくるが普段は優しいので、まあ良いかと思う
どれも、「失う」ことの怖さが選択を縛っている構図です。
「もう終わっている」と気づいていても、なぜ離れられないのか
理屈では、関係を終わらせた方がいいと分かっている。
でも、人は損を確定することに耐えられません。
「せっかくここまで頑張ったのに…」
「あの人にも良いところはあったし…」
「自分が悪いのかも」
そんなふうに過去の積み重ねや情が、合理的な判断を曇らせてしまう。
損を「確定」したくない。
プロスペクト理論でいうところの、「損失領域に入ったときほどリスクをとる」という心理が、この場面では「ズルズルと関係を続けてしまう」という形で表れます。
この心境は投資における「損切」に踏み切れない心理と似ているかもしれません。
見切ることは冷たいことじゃない|「距離を置く勇気」の話
もちろん、人間関係において「すぐに切る」ことが最良とは限りません。
ただ、
「距離を取る」
「会わない選択をする」
「連絡頻度を減らす」
といった行動は、自分を守るために必要な場合もあります。
関係を終わらせることは、裏切りではありません。
むしろ、「無理して続けることでお互いをすり減らす方が、不誠実」なこともあるのです。
現在の職場からの転職についても
やめることは、負けではない
そう自分に言い聞かせるだけで、少し心が軽くなることもあります。
損失回避と、サンクコスト効果・ダブルバインドとの関係
ここで少しだけ、プロスペクト理論とよく混同される「サンクコスト効果(コンコルド効果)」にも触れておきましょう。
- プロスペクト理論:これから選ぶ未来の選択肢に対して、損失を回避しようとリスクをとる
- サンクコスト効果:過去に投じたコストを惜しんで、本来撤退すべき場面でもやめられない
人間関係においては、この2つが同時に働くことが少なくありません。
「ここまで我慢してきたから」
「せっかく築いた関係だから」
そう思って引けなくなっているなら、このダブルバインド(二重拘束)にかかっているのかもしれません。
まとめ:プロスペクト理論 VS 未来志向の判断
人間関係には、状況に応じて見直しが必要になる時期があります。
距離を置いたり、終わらせたりすることは、かならずしも自暴自棄な行動ではありません。むしろ、自分や相手を大切にしたいという気持ちの表れでもあります。
損失回避バイアスやサンクコストを惜しむ心理が働くと、これまでの関係にかけた時間や感情を手放すことに強い抵抗を感じます。絶対的な正解はありませんが「過去にどれだけ投資したか」よりも、「これからどうありたいか」という未来志向の方が、判断基準としては健全だと思います。
ということで、今回はここまで。
プロスペクト理論や損失回避バイアスの全体像は、こちらの記事もご覧ください。
ギャンブルとプロスペクト理論についてまとめた記事はこちらです。
ギャンブルとよく似ていますが、投資とプロスペクト理論の関係についてまとめた記事はこちら。