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こんにちは、柴山です。
唐突ですが、とある企業ホームページに、以下のように記載されていたとします。
- 急な発注や試作品の依頼にも対応します
- お客様の笑顔とアフターサービスを大切にします
- 製品管理に細心の注意を払っています
この企業が補助金申請のために事業計画書を作成するとします。そこで自社の現状(強みや課題など)を記載する必要がありますが、これらを「強み」として書けば、それで充分なのでしょうか?
答えは「否」です。それだけでは単に文章量として足りないだけではなく、内容的にも不十分です。
なぜなら第一回の記事の繰り返しになりますが、補助金は申請すれば必ずもらえるわけではありません。多数の応募申請の中から、より有望で実現性の高いと思われる事業計画に基づく申請が採用(採択)されます。つまり他社との競争に勝たなければなりません。
ということは、同業他社がどこでもホームページに載せているであろう「心がけ」的なことを書いただけでは、他社よりも有望と思われることは無いからです。
そこで今回は補助金申請をするうえでは避けて通れない、「言語化」について解説します。
復習:事業計画書の内容は?
事業計画書の基本的な内容を、一応おさらいしておくと
- 自社の概要・沿革:
どのような会社(事業内容や経営理念)で、どのような経緯を経て今に至るか - 現状分析:
市場環境や、自社が抱えている課題や強み・弱みなどを分析 - 今回、補助金を使って行おうとしていること:
新製品開発、新事業への挑戦、省力化につながる設備投資など
(ここではこれを「新事業」とします) - 新事業が自社にもたらすもの:
新事業が自社の強みを活かせること、課題を解決できることなど、単に「新しいことをやりたい」ではなく自社の状況にマッチしていることを説明 - 新事業の実施体制や収益計画、資金調達について:
自社にとって現実的な計画であることを説明
利用する補助金ごとに事業計画書の書式は異なりますが、おおよそこんな感じです。
つまり、ただ新事業についてだけ説明すれば良いという訳ではなく、全社的な事業構想のうえで新事業が必須であることを伝える必要があります。
なお事業計画書で記載すべき内容について、詳しくは以下の記事をどうぞ。

ポイント:必要な情報を持っているのは事業者側
ところで、外部の専門家(中小企業診断士・行政書士・その他コンサルタント)に事業計画書について相談する場合でも、上の①~⑤についての情報を持っているのはあくまで事業者側です。
外部専門家に事業計画書についての経験・ノウハウがあったとしても、あなたの会社の現状やなぜ新事業を始めたいと思ったかについては、情報提供が無い限り知る由もありません。
そこで、経営者または社内の担当者がこれらの情報を外部専門家にしっかり伝える必要があります。当然ながら外部の者に「伝える」には言葉で伝える、つまり最初に書いたように「言語化」する必要があります。が、これを苦手とする方が多いです。
「言語化」が不十分な例
先ほどの、「とある企業のホームページの例」では以下のように記載されていました。
- 急な発注や試作品の依頼にも対応します
- お客様の笑顔とアフターサービスを大切にします
- 製品管理に細心の注意を払っています
これが事業計画書に書く「強み」として不十分な理由は、
- これが「そう心がけているだけ」なのか、ちゃんと実行しているのか分からない
- どの程度まで実行しているのも分からない
- 仮に実行しているとして、どのように行っているのか分からない
⇒もしかしたら社員にサービス残業させて無理な納期に対応させている可能性もあり、そんな企業を国として応援する訳にはいかない
ということで、「分からないことだらけ」なのです。

とある企業の実態は?
ワークライフバランス無視で、受注の度に現場に無理をさせているような企業に対しては、国としても補助金は投入できない。
「とある企業」について、もう少し詳しく言語化してみた
では、あくまで仮の例ですが、自社の強みについて以下のように事業計画書に書いてあったらどうでしょう。
急な発注や試作品の依頼にも対応可能である
当社では社員教育により、入社3年以上の全て作業員は複数の機械のオペレーションができる体制を整えており、さらに○○の資格者●名、△△が●名など資格取得も奨励している
これにより急な注文に対しても、柔軟なライン編成を行うことで対応が可能である。
アフターサービスのための体制を整えている
全てのお客様からのご注文履歴を、アフターサービスに必要な部品の在庫状況と合わせてデータベース化している。メインテナンスが必要になる時期にあわせて定期点検を行うことで、不具合を未然に防ぐサポート体制を構築、顧客の信頼を得ている。
製品管理のためにベテラン作業員を再雇用している
5年前より定年を迎えた作業員●名を「検品マイスター」として再雇用し、品質基準厳守の役割を与えている。これにより、実施前に比べて不良品率が●%低下した。また、これらベテラン作業員は急な注文に際しての応援要員としての役割もあり、他の作業員の残業の削減にも貢献している。
このように自社がやっている取組みについて、具体的に書くことで初めて他社との差別化につながり、ひいては補助金を受け取るのにふさわしい企業だと審査員に伝えることができます。
反対に、審査員から「この会社は意気込みを書いているだけ。内容も月並み」と思われてしまっては採択されるのは困難です。
外部専門家の役割は「情報整理の上での言語化」
実際の補助金申請にて、経営者の方に「ヒアリングシート」などの書式を渡し、
「書式に沿って、御社の強みや弱み、現状で感じている課題などを記入しておいてください」
と伝えても、充分な情報が得られないことがほとんどです。
これは中小企業で、特に創業以来ずっと特定企業の下請けだった会社の場合、自社の強みについて積極的に外部にアピールしたことがなく、まして課題や弱みについて言語化するなど考えたこともない、という場合は無理もないことかもしれません。

やってみると意外と難しい「言語化」
企業内で行われていることは、内部の人にとっては「当たり前」になっているため、あらためて第三者に伝わるよう言語化するのは難しかったりします。
事業計画書の内容を掘り下げるには
そこで事業計画書の内容が審査員に響くようにすべく、質問・ヒアリングを繰り返し、内容をより具体化するのが外部専門家の役割です。
見方を換えれば、外部専門家の役割は提供された情報を整理して事業計画書のフォーマットに合わせてまとめるという、言ってみればそれだけです。
そこで「わざわざ外部に依頼するほどの仕事なのか?」と疑問に感じる人もいるかと思いますが、採択の可能性を高めるためには事業計画書の内容を労力を惜しまずに、とことんまで掘り下げる必要があります。
そこで人手が少ない、特に事務スタッフのマンパワーが足りない中小企業が補助金申請を行う上では、外部専門家を活用するのは現実的な選択だと思います。
事業計画書を作成後に行いたいこと
ところで、事業計画書を作成にあたり改めて自社の強みを言語化してみると、
「今までのホームページでの説明は一体なんだったんだ」
と思えてくるかもしれません。
そう思えるのは、自社の特長を説明しているつもりだったのに実際には何も伝えられていなかった、ということに気付けたからで、ある意味良いことです。
そこで補助金申請をきっかけに、ホームページ、名刺、キャッチコピーなどを見直してみよう、ということも是非検討して頂きたいと思います。

