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こんにちは、柴山です。
これまでは、補助金申請全般に共通する考え方を中心に解説してきましたが、今回よりしばらくは個別の補助金について解説します。
まずは新事業進出補助金(正式名称:中小企業新事業進出促進補助金)についての第1回目です。
とはいえ補助金について詳細について解説し始めると最終的には公募要領と同じボリュームの文章になってしまいます。そこで、このブログでは読者の方が「この補助金は我が社に向いているか、我が社は対象外でないか」ということの判断に役立つような情報を中心に伝えていきたいと思います。
新事業進出補助金はどんなことに使える?
新事業進出補助金は、既存事業とは異なる分野・市場に挑戦する中小企業の取り組み(=新事業)を支援するための補助金です。
既存の設備更新や、商品・サービスの代替ではなく
- 新しい顧客層に向けた事業
- 新たな製品・サービスの提供
- これまでとは異なるビジネスモデルへの挑戦
といったことが想定されています。
新事業とはどんなものか?
新事業といっても、「既存事業と異なる産業分類に進出しないといけない」などの縛りはありません。採択されるかはともかく、申請する上でのハードルはそれほど高くありません。
新事業進出の例
自動車部品下請けメーカーが、使用していない倉庫を解体、跡地に飲食店をオープンさせる。
→提供する製品・サービス、対象顧客ともに従来の事業とは異なるため、明らかに「新事業」である。
新事業進出といえるか微妙な例
企業パンフレット(紙媒体)を製作していた印作会社が、企業ホームページ制作に進出。
→対象顧客は変わらないので「新事業」とみなされない可能性あり。こういった事業でも申請(応募)はできますが、新規性が低いため採択されるのは難しいかもしれません。
より詳しい条件として、以下もご確認ください。
公募要領から抜粋:対象とならない事業(クリックで開きます)
【製品等の新規性要件に該当しない例】
・既存の製品等の製造量又は提供量を増大させる場合
・過去に製造していた製品等を再製造等する場合
・単に既存の製品等の製造方法を変更する場合
【市場の新規性要件に該当しない例】
・既存の製品等と対象とする市場が同一である場合(既存の製品等の需要が新製品等の需要で代替される場
合・単なるメニューの追加と考えられる場合)
・既存の製品等の市場の一部のみを対象とするものである場合
・既存の製品等が対象であって、単に商圏が異なるものである場合
新事業進出補助金の補助率・上限は?
新事業進出補助金の補助率、上限は以下のようになります。
①補助率:1/2
②補助金額の上限
| 従業員数 | 補助金額 |
|---|---|
| 従業員数20人以下 | 750万円~2,500万円(3,000万円) |
| 従業員数21~50人 | 750万円~4,000万円(5,000万円) |
| 従業員数51~100人 | 750万円~5,500万円(7,000万円) |
| 従業員数101人以上 | 750万円~7,000万円(9,000万円) |
例として、従業員20人の事業者が5,000万円の投資を行う場合、最大2,500万円の補助金を受け取ることが可能で、さらに賃上げ特例の適用することで補助上限額の引上げを受けることができます。
定められた「要件」をクリアする必要あり
なお、新事業への進出という前提条件に加えて、一定以上の賃上げなど定められた「要件」を満たす必要があります。要件については上記の「賃上げ特例」等と合わせて、次回記事で解説予定です。
対象となる事業者は?
新事業進出補助金を利用できる主な事業者は以下のようになります。
①中小企業であること
この補助金を利用できるのは主に中小企業です。中小企業には明確な定義があり、「世間的に名を知られた大企業よりは小さい」といった曖昧なものではありません。
中小企業の定義(クリックで開きます)
中小企業の定義は以下のようになります。(中小企業庁HPより抜粋)
| 業種分類 | 中小企業基本法の定義 |
|---|---|
| 製造業その他 | 資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は 常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人 |
| 卸売業 | 資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社又は 常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人 |
| 小売業 | 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は 常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人 |
| サービス業 | 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は 常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人 |
なお、この補助金は従業員の賃上げを目的の1つとして持つ性質上、従業員0人の事業者は対象外です。また、最低1期分の決算書の提出が必要です。(=創業直後の事業者は申請不可)
②みなし大企業でないこと
大企業が補助金利用目的で子会社を作ることを認めてしまうと、中小企業を支援するという補助金の目的が無意味になってしまいます。
このため大企業の100%子会社や関連会社などは、この補助金の対象となりません。
③別の補助金を交付決定を受けて事業を実施中の事業者、別の補助金の採択を受けながら取り消された事業者などでないこと
過去に補助金を利用したことがある事業者は一律利用できないということではありませんが、公平さを保つためにルールが設けられています。また、過去に補助金関連の不正を行っていると審査対象外になる場合が有ります。
④条件に適合した組合
生活衛生同業組合、酒造組合など公募要領に定められた各種組合は申請することが出来ますが、組合員の人数や出資額に制限があります。
⑤リース会社(共同申請の場合)
中小企業等が設備などを導入する際にリース会社を利用する時、リース会社と中小企業の共同申請の形を採ることができます。(この場合のリース会社は中小企業である必要なし)
申請のための事前準備① GビズID取得
あなたの会社が新事業進出補助金の対象となる目途がついたとして、実際に申請を行うには一定の準備が必要です。
ここでは、
- GビズIDの取得
- 一般事業主行動計画の策定・公表
について、順番に説明します。
GビズIDの取得
現在、多くの補助金申請は電子申請にて行うことになっており、新事業進出補助金も例外ではありません。GビズIDは電子申請画面にログインするために必要なアカウントです。
GビズIDはマイナンバーカードを使うことで即日発行を受けることが可能ですが、書類手続きの場合は時間がかかります。期日までに準備出来ていないと申請自体が不可能になるため、早めに準備しておく必要があります。
なお一度取得したGビズIDは補助金申請の度に更新する必要などはなく、そのまま有効です。
GビズIDについて公式サイトは こちら
また以下の記事もご覧ください。
申請のための事前準備② 一般事業主行動計画の策定・公表
一般事業主行動計画の策定・公表は新事業進出補助金を申請するための必須要件です。
必須要件といっても新事業で達成しなければならない目標という訳ではないので、賃上げ要件などとは性質が異なります。むしろ申請する上での事前準備と考えた方が分かり易いです。
逆に言えば、この計画の「策定・公表」が終わっていないと申請自体が出来ないため非常に重要です。
とはいえ公式サイトの説明も分かりにくいものとなっていますので、以下の説明を読んでもピンとこない方、何をどうすればいいか分からない方は外部専門家の助力を仰いだ方が良いと思います。
そもそも一般事業主行動計画とは?
一般事業主行動計画には根拠となる法律が2つあるため、以下の2種類があります。(中小企業庁HPより抜粋)
| 法律 | 主な目的 | 一般事業主行動計画の概要 |
|---|---|---|
| 次世代育成支援対策推進法 | 次世代の子どもが健やかに生まれ育つ環境を整備し、仕事と育児を両立できる雇用環境を企業が支援すること | 仕事と子育ての両立支援に関する雇用環境の整備 子育てをしていない従業員も含めた多様な労働条件の整備 |
| 女性活躍推進法 | 女性が職業生活で希望に応じて十分に能力を発揮し、活躍できる環境を整備すること | 女性の活躍状況の把握と課題の分析 課題を踏まえた数値目標・取組内容の設定 女性活躍に関する自社の数値データの公表 |
上段は「我が社は社員が仕事と家庭(子育て)を両立できるようにするために、このような取り組みをしています」という計画のことで、下段は「我が社は女性が働きやすくするために、このような取り組みをしています」というものです。
2つの計画の策定と公表は従業員101人以上の企業には義務付けられており、既に済んでいる事業者は改めて行う必要はありません。(100人以下の企業に対しては努力義務となっています)
なお新事業進出補助金の申請のためには両方の策定・公表をする必要は無く、上段(次世代育成支援対策推進法)の方だけでOKです。
一般事業主行動計画(次世代育成支援対策推進法)策定・公表の進め方
流れとしては公式サイト「両立支援のひろば」にて、
- ログインアカウント作成
- マイページにて自社の一般事業主行動計画を入力、必要な資料をアップロード
- 数日~1週間後、上のトヨタ自動車のように自社の一般事業主行動計画がサイトで公開される
ここまで終われば「一般事業主行動計画の策定・公表」が済んだという扱いになります。なお公募要領には「公開されるまで1~2週間かかる」と記載されていますが、実際にはそこまで時間はかからないようです。
以下、実際の画面にて操作方法をまとめました。なおアップデート等により画面が変更される可能性が有りますので予めご了承ください。
①「両立支援のひろば」のログインアカウントを作る
「両立支援のひろば」トップページは こちら

ログインページは こちら です。

このページにて、初めてご利用の方 > 新規登録 ボタンを押しアカウントを作成、ログインします。
②ログイン後、マイページから「自社の行動計画・取組みの新規登録・修正」に進む

③「次世代育成支援対策推進法に基づく~」を選択する

一番上のボタンを選択してから「次のページへ」ボタンを押下します。
④入力作業を進める

続く画面で入力を進めます。
⑤行動計画のPDFをアップロードする

PDF資料(一般事業主行動計画)をアップロードします。
特定の書式は定められていないようです。
他社がどのような計画を定めているかは こちら から企業名で検索、確認することができます。
参考例:
トヨタ自動車
株式会社電通
株式会社博報堂
ソフトバンク株式会社
三菱商事株式会社
実際に大企業の例を見て頂ければわかりますが、アップロードする資料はそれほど手の込んだものでなくて大丈夫だということが分かります。
参考:資料にに盛り込むべき主な内容(クリックで開きます)
①仕事と家庭の両立のために数値目標
例:残業時間を月間〇時間以内にする
有給休暇の取得率●%以上にする
性別関係無く育休の取得率●%以上にする
②数値目標を達成するための行動計画
例:数値目標を全社員に見える場所に掲示
ノー残業デーを決める
育休の説明会を毎年行う
③目標を達成するための計画期間
(通常2~5年程度)
⑥入力不要な項目について
一般事業主行動計画の入力画面は、「くるみん認定申請」※の画面も兼ねており、それにより非常に分かりづらくなっています。ですが、こちらは前述の「女性活躍推進法」に基づく一般事業主行動計画のためのものなので、新事業進出補助金の申請する上で以下の項目は入力する必要はありません。
※くるみん認定申請も取得していることは加点要素になります。


⑦最後まで入力後、数日~1週間待つ
内容に問題が無ければ、一定期間後に こちら で検索することで自社の一般事業主行動計画も閲覧できるようになります。
「一般事業主行動計画の策定・公表」は他の補助金でも役立つ
「一般事業主行動計画の策定・公表」は「ものづくり補助金」・「中小企業省力化投資補助事業」を申請する上でも必須となっています。(いずれも従業員数21名以上の場合のみ)※
従って「補助金による事業を検討しているが、どの補助金を利用するか決まっていない」という事業者であっても、いったん登録作業を進めておくのが得策です。
※ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(第22次公募)、 中小企業省力化投資補助事業(第5回公募)
それぞれ公募要領より
提出書類はなにが必要?
新事業進出補助金の申請は電子申請となりますので、「提出」といっても実際には指定の書類を電子申請画面にてアップロードする形になります。
必須の書類と任意の書類を以下にまとめました。
必須書類(第3回の公募要領より)
申請時の必須書類は以下のようなものがあります。
決算書
・法人の場合:直近2年間の貸借対照表、損益計算書(特定非営利活動法人は活動計算書)、製造原価報告書、販売管理費明細等
・個人事業主の場合: (青色申告の場合)青色申告決算書における損益計算書、損益計算書の内訳、貸借対照表(4 ページすべて 簡易簿記の場合は、損益計算書(1 ページ目)、貸借対照表(4 ページ目)
(白色申告の場合)収支内訳書
従業員数を示す書類(労働基準法に基づく労働者名簿の写し)
収益事業を行っていることを説明する書類
・法人の場合:直近の確定申告書別表一及び法人事業概況説明書の控え
・個人事業主の場合:直近の確定申告書第一表及び所得税青色申告決算書の控え
(白色申告の場合は直近の確定申告書第一表及び収支内訳書の控え)
金融機関による確認書(金融機関等から借入する場合のみ)
リース料軽減計算書・リース取引に係る宣誓書
(リース会社と共同申請する場合のみ)
再生事業者であることを証明する書類
(再生事業者加点を希望する事業者のみ)
インポート用フォーマット(エクセル資料)
①事業の実施スケジュール、②決算内容(貸借対照表・損益計算書)、③収益計画について、事務局が指定するエクセル資料に入力したものをアップロードする必要があります。
任意の書類
上記以外にも自社が行いたい事業についての説得力を増すために、任意で資料を追加することができます。
主な資料として以下のようなものがあります。
事業計画書
電子申請画面では会社概要、既存事業、新事業、市場分析についてなど、様々な項目について文字情報を入力することになっています。
逆に言えば、市場分析についての図表、導入したい設備の画像、作業の工程図などビジュアル的な要素を入力することはできません。そこで電子申請画面で文字入力するのとは別に事業計画書としてPDFをアップロードすることができます。
こちらは視覚的により分かり易い資料として作り込むことができるので、言わば審査員にアピールするための「事業計画書の完全版」のような意味合いを持ちます。
見積
導入したい設備などの見積は審査の段階では見積は必須書類ではありません。(採択後の交付申請の際には必須)しかし、金額について具体的な情報が加わることで説得力を増すことが出来ます。
カタログ・図面など
導入したい設備機器のメーカーカタログからの抜粋、イメージ画像、工程を説明する資料(フローチャートなど)も説得力を増すために有効な素材になり得ます。
その他(分析資料など)
新事業が成長分野であることを示す分析資料や収益計画の詳細などを添付することも可能です。
任意書類を省くとどうなる?
正直なところ、任意書類まで準備するのはかなりの手間です。
しかし、一連の記事で繰り返し書いてきたように補助金を獲得するには他社よりも有望な事業計画にて申請し、審査で勝ち残る必要があります。
このため「面倒だから」と、出来るはずだったことまでやらないと採択される可能性を自ら下げることになります。申請を自社だけで行う場合も、外部専門家を活用する場合も、いずれも「出来ることは全てやる」という意気込みが不可欠です。
新事業進出補助金の採択率は?
新事業進出補助金は比較的新しい補助金で、2026年1月時点で第3回が申請受付中、採択結果が発表されているのは第1回目のみになります。
回数を重ねていかないと採択の傾向は分かりませんが、少なくとも第1回目の採択率は約37%で決して高いとは言えません。採択を目指すのであれば、事業計画の作成など本気で取り組む必要があります。
今回記事をここまで読んで頂いた時点で
「なんか大変そう」
と感じた方は外部専門家を活用することをご検討ください。
次回の記事では、事業計画で掲げなければならない数値目標(要件)や、採択の可能性を高めると思われるポイントについて解説予定です。


