【組織と権限のマネジメント】 「話せばわかる」は本当か?

こんにちは、柴山です。

中小企業診断士試験の勉強をしていると、1次試験「企業経営理論」の中で職務上の権限の話があれこれ出てきます。また2次試験の解答でも、業務改善のために権限について言及することがあります。

企業の意思決定で権限が問題になるのはどんな場合でしょうか?
また誰かを決定権者に任命するのではなく「みんなで話し合って決める」のでは何がマズいのでしょうか?

今回はそんなことを記事にしてみました。

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中小企業診断士試験と「権限」

中小企業診断士試験で「権限」について問われるのは、以下の場合が主ではないかと思います。

その① 社長の決断

社長の決断!

俺一人で抱えるのはやめて優秀な部下に権限を与えよう!
部下の士気も上がるし、成長にもつながる
はず!

これは権限の委譲の考え方です。

その② 部下の言い分

俺が責任者だ!

俺を責任者に任命する以上、権限や裁量をよこせ!
でなきゃ、やらん!

これは、責任と権限の一致という考え方です。(責任・権限一致の原則)
せっかくプロジェクト責任者に命じられて奮起していたのに、社長がいちいち細部まで口出ししてきたとすると

落ち込む男

なんだ俺、なんの決定権も無いじゃん…

こんな感じでモチベーション大幅ダウンとなります。
責任者に任命した以上、それを果たすために必要な権限や裁量を与えておくべきです。

その③ 俺の残業をなんとかしろ

残業する人

社内で〇〇〇ができるのは俺だけなんだから、
雑務は他の人がやってくれてもいいんじゃないの…

これは業務範囲の問題です。
特定の人だけ残業が多いのは問題ですし、社内で唯一のスキルの持ち主が重要業務に集中できない環境にあるなら改善しなければなりません。

2次試験での注意点

上で書いたような権限に関する論点は2次試験の事例Ⅰ~Ⅲで出題される可能性があります。

普通に考えて「組織・人事」が問われる事例Ⅰだけの論点にも思えますが、事例Ⅲでも

納期を遅延を防ぐためにはどうすべきか助言せよ
⇒解答例:生産管理担当者が多忙過ぎるのが原因なので業務範囲を見直す

製品不良を防ぐにはどうすべきか助言せよ
⇒解答例:専任の品質管理担当者がいないのが原因なので新たに任命する

こういった設問は普通にあり得るので、要注意です。
(事例Ⅱで権限が論点となる出題はあまり無かった気がします)

決定権者を明確にする方法 VS 集団で話し合って決める方法

できる男

個人が決定した方が責任が明確
あとスピードも大事!!

話し合う人々

みんなで話し合うことが大事!



世間一般においては、上記のうち一方の考えが完全に正しく、もう一方が絶対に間違っているということはないと思います。ただ、迅速な意思決定が求められる企業経営の考え方では、だいたい前者を良しとします。
(少なくとも診断士2次試験においては「合議制で決める」という解答は私の知る限りはありません)

以降⇩の内容は診断士試験からは離れますが、「話せばわかる」という考え方を過信してはいけない例をいくつか挙げてみました。

話せばわかるの限界① 交通事故に遭ったらどうするか?

貴方が交通事故に遭ったとして、かつ負傷者救助の必要も無い状況であれば、
まず警察と保険会社に連絡する、
というのが普通の対応です。

何故そうするのか、といえば

◇警察に報告するのは法的義務だから
◇保険を適用するうえで状況を把握してもらう必要があるから

など重要な理由がありますが、それに勝るとも劣らないのが
当事者同士だけでの話し合いほど危ういものはないから
だと思います。

例えば、
明らかに相手が悪い状況で
・口達者な相手に言い負かされてたり
・強面の大男に大声で凄まれたり
等により、一方的な内容の示談書を書かされたりしたら最悪です。


そのようなことにならないように第三者に間に入ってもらう、という意味合いは無視できないほど大きいと思います。

話せばわかるの限界② 議会と裁判

いきなり話が大きくなってしまいましたが、

なぜ、

◇議会では全会一致でなく多数決で決めるのか
◇わざわざ裁判を起こして裁判官に判決を出してもらうのか

といえば、

◇全会一致で意見がまとまるまで待っていたら時間がかかり過ぎる
 →実質なにも決まらない

◇争いごとが深刻であるほど当事者同士だけで合意に至るのは難しい、
 →裁判官に決めてもらった方が現実的

だいたいこんな感じではないかと思います。
ということで、議会も裁判も「話し合っても分かり合えない場合がある」ことを前提としてできた制度ではないかというのが私の意見です。

話せばわかるの限界③ 大企業と下請企業

ここに世界的な自動車メーカーと、その下請けで部品を作っている中小企業があり、自動車メーカーが部品価格の値下げを迫ってきたとします。


もし、この中小企業が独自の技術を持っていて、他からの取引の引き合いに困ってなければ

うっせー!!

いや、ウチはあんたのところと無理につきあう必要無いし、値下げなんて絶対に応じないよ!

と言い返せます(かっこいい)

逆にそういったモノが無ければ

やむなし…

値下げは承知いたしました。
今後とも何卒お願いします…

と、ならざるを得ません。

この状況を「話し合いでなんとか」というのは実質的に無理で、話し合いが始まる前の両社の力関係(技術力など含む)によって、とっくに結論は決まってしまっているわけです。

話せばわかるの限界④ 野党はなぜ野党のままなのか

あまりここで政治的な問題に立ち入るつもりはないのですが、起きてしまった戦争や揉め事に対して「話し合いで解決すべきだ」「話せばわかる」と主張する野党(ここでは仮にA党)があったとして…

広義の「話し合い」には
◇A党が掲げる政策の選挙民への説明
◇A党に投票するよう選挙民への説得

以上も含むとすると、「話せばわかる」が正しいなら、

なんでA党は与党になれないのか
という問題が発生します。

何故、彼らは支持を得られないのか…

考えられる理由として、

①話し合えばわかる、という前提が間違っている
②A党の政策が「話せばわかる」の許容範囲を超えて間違っている

上記①②いずれか、または両方に該当すると考えるしかありません。

例外はA党ができたばかりで、まだ選挙民とコミュニケーションをとる時間が充分なかった場合くらいではないでしょうか?

そもそも「話し合いで何でも解決する」は良いことなのか?

話し合いで解決する方が暴力で解決するよりは良いに決まっています。
が、皆さんは職場などで議論の果てに誰かに言い負かされ、時間が経ってから

怒れる男

くっそー!!!
今思えば、こう言い方をすれば良かった…(涙)

ということは無いでしょうか?

現実の世界には議論が得意な人、苦手な人がおり、時には論点のすり替えをしてでも相手を言い負かそうとする人もいます。(あるいは単に声が大きい人とか)

では業務上の案件で方向性を決めないといけなくて

◇その分野で実績はあるけど議論は下手な人
◇特に実績は無いけど議論は得意な人

いずれかの意見を採用するとしたら、どうすれば良いのでしょう?
会議による話し合いの形をとれば、後者の意見が採用されてしまう可能性も無視できません。

そうならないようにする分かり易い方法が、
その分野の知識・実績が最もある者を権限を与える
です。

議会のような多数決方式や、裁判のような調停方式は、どうしても時間がかかります。ですので、そういった決定方法は株主総会、取締役会など重要な場面のみに限定し、日常業務では担当者に任せる方が効率的なはずです。

ある意味、弱肉強食の世界?

蛇足ですが、「なんでも話し合いで解決する」という世界は、一歩間違えれば人を言い負かすのが得意な人だけが一方的に得をする、ある意味で弱肉強食の世界になりかねません。

ちなみに私は言い負かされることのが多いので、そういう世界は絶対に嫌です。

ファシリテーションは会議を救えるのか?

以上のように話し合って決める、特に当事者だけで話し合って決めるという決定方式には色々問題があります。
が、意思決定の前段階で複数の人が様々な角度から意見を出すことには、見落としを防げるというメリットもあります。

そこで、特定の人の意見だけが通るような会議にならないように司会者が進行をコントロールする、いわゆるファシリテーションの出番です。ファシリテーションについてはまた別の機会に記事を書きたいと思います。

なお、ファシリテーションも大事ですが、無駄な会議を減らすことが課題の企業も多いと思います。


今回はいったんここまで。

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