こんにちは、柴山です。
中小企業診断士は、「中小企業支援法」に基づく国家資格です。中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行う専門家とされています。(中小企業庁HPより)
大手資格講座やビジネス誌で度々行われる、取りたい資格アンケートでも常にランキング上位に入る人気資格でもあります。独立も可能で、さらに企業内でも評価されることが多い資格です。
今回は中小企業診断士(以下、「診断士」)の試験の難易度および受験制度についてまとめてみました。
ちなみに私は診断士に加えて、宅地建物取引主任者(以下、「宅建」)と行政書士の資格を持っています。最初に3つの資格の受験回数と勉強期間をまとめてみました。
- 宅建:1回(勉強期間 約半年)
- 行政書士:2回(勉強期間 約1年半)
- 診断士:2次試験で4回(勉強期間 約5年)
宅建と行政書士に合格したのは10年以上前、診断士に合格したのは令和4年です。受験時期が異なることによる傾向(難化または易化)は、ここでは考慮に入れていません。また、勉強期間はおおよそとなります。
それでも上の受験回数は、3つの資格の難易度をほぼ正確に表していると思います。
つまり難しい順に
診断士>行政書士>宅建
です。
以降にて順番に説明していきますが、中小企業診断士試験の全体像は下記の表のようになります。
中小企業診断士試験の全体像
受験資格:特になし(年齢・学歴による制限無し) | ||
1次試験 | 2次試験(筆記+口述) | |
マークシート式7科目 2日間で開催 科目合格あり(後述) 電卓使用不可 毎年8月上旬開催 (令和6年度は8/3~4) 合格率:30%弱 | 筆記試験:記述式4科目 1日で開催 科目合格無し 1次に合格すれば2回受験可能 (2回落ちたら1次からやり直し) 電卓使用可 毎年10月下旬開催 (令和6年度は10/27) 合格率:20%弱 | 口述試験:面談形式 1日で開催(10分程度) 落ちたら1次からやり直し 毎年1月下旬開催 (令和6年度は年明け1/26) 全て口頭で回答 合格率:ほぼ100% |
なお受験料は令和6年の場合で、1次試験14,500円、2次試験(筆記+口述)17,800円です。
試験形式を比較すると以下のようになります。
- 宅建試験:1次試験のみ/全問マークシート式
- 行政書士試験:1次試験のみ/マークシート+記述式
合格率から見た診断士試験の難しさ
世の中には司法試験など、さらに合格が難しいと言われている試験もあるとはいえ、診断士試験も結構な難易度だと思います。
よく言われるのは、司法試験、税理士、会計士、弁理士よりは易しく、同じくらいの難易度なのが社労士ではないかということです。
もちろん試験問題に対する個人的な向き・不向きもあり、弁理士には合格したけど診断士は不合格だったので諦めた、という方も私の知り合いにいました。
ちなみに令和5年の場合だと1次・2次試験の受験者数、降格者数などの数字は下記のようになります。
1次試験(沖縄地区の再試験除く):
受験者数18,621人 5,521人 合格率29.7%
2次筆記試験:
受験者数8,266人 合格者1,557人 合格率約18.9%
上記の受験者数には申し込んだけど受験しなかった人、都合により全科目受験できなかった人は含まれていません。
そうすると1次試験をパスして、さらに2次も受かった人の割合は
29.7%×18.9%=5.6%
これに対して
- 宅建の合格率が15~18%
- 行政書士が12~14%
ということで、やはり診断士試験はかなり難しいということになります。
なお、最終となる口述試験は遅刻せずに会場に来れば、ほぼ100%受かる試験です。このため受験対策を語る際には、「2次」と言えば2次筆記試験の事を指す場合が多いです。
診断士1次試験は宅建・行政書士よりも簡単なのか?
上の数字を見ると、診断士の1次試験だけなら宅建や行政書士より簡単そうに見えるかもしれませんが、そうでもありません。
1次試験だけでも、下記の通り7科目もあり、2日間に渡って試験は行われます。
・経済学・経済政策
・財務・会計
・企業経営理論
・運営管理
・経営法務
・経営情報システム
・中小企業経営・中小企業政策
(全てマークシート形式です)
いや、でも1次は3割近く受かるんでしょ?
そう思われるかもしれませんが、それは1次試験では「科目合格」の仕組みがあるからです。
この「科目合格」の制度が無く、単年で突破しなければならないとすれば1次の合格率はかなり下がるはずです。おそらく、その場合は宅建や行政書士の合格率より低くなるのではないかと思います。
1次試験の科目はバラエティに満ちている
上に列挙した科目名を見れば分かる通り、1次の試験科目は多彩です。
経営学、マーケティングから始まって、会社法を始めとした法律関係、国の中小企業振興政策まで多岐に渡ります。経営に関する分野を一通り網羅することが目的なので、ある意味当然と言えるかもしれません。
反面、1つ1つの科目については、例えば「財務・会計」は税理士の方にとっては簡単かと思います。つまり診断士試験はどちらかというと「広く・浅く」の傾向があります。
(それでも経理や簿記と縁が無かった方からすると「財務・会計」は結構な難易度です)
暗記を頑張れば何とかなるのが1次試験
1次試験は科目が多い分だけ宅建・行政書士に比べて覚えるボリュームは多いです。ただ、基本的には「暗記すれば受かる」試験なので、宅建や行政書士に合格できる方であれば、
勉強時間を確保して、ひたすら復習
人間は一度覚えたことでも時間の経過により忘れていきます。
このため1次試験が終わるまで、全7科目の復習を延々と続けていくことが必要です。また、模試で全然ダメな結果が出ようとも、折れずに復習し続ける根気の良さが大切。仕事や家庭の環境により、充分な勉強時間の確保が難しいという人も結構いると思います。
理解して覚えることが求められる
暗記ものの試験、といってもテキストの内容を丸暗記していれば即、正解の選択肢が選べるというほど簡単ではありません。問題文が抽象的な「企業経営理論」、経理の実務経験がない受験生を悩ませる「財務・会計」など、各科目ごとの難しさがあります。
知識の暗記だけでなく、解法まで頭に入れたうえで、時間内に解けるようになるまで練習が必要です。
この辺りを踏まえて取り組めば、働きながらでも合格は不可能ではありません(楽に合格できるとは言いません)。
参考までに、1次試験「企業経営理論」と「財務・会計」から1問ずつ貼っておきます。
令和5年 第1次試験 企業経営理論 第1問(⇒クリックで開きます)
ドメインに関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア PPM を用いた事業間の資源配分の決定を基に、企業ドメインが決定される。
イ 企業ドメインには、多角化の広がりの程度、個別事業の競争戦略の方針、差別化の在り方および日常のオペレーションといった内容が含まれる。
ウ 経営者は事業間でシナジー効果がどれくらい働くのかを考えて、企業ドメインを決定する。
エ 事業ドメインには、部門横断的な活動や他の事業分野との関連性、将来の企業のあるべき姿や経営理念といった内容が含まれる。
令和5年 第1次試験 財務・会計 第3問(⇒クリックで開きます)
当社は、X1 年度期首に機械(取得原価 300,000 円、耐用年数 5 年)を購入し、200 % 定率法により減価償却を行っている。保証率は 0.10800、改定償却率は 0.500である。X4 年度における減価償却費として、最も適切なものはどれか。
ア 18,750 円
イ 25,920 円
ウ 30,000 円
エ 32,400 円
※正解はこの記事の最後に載せました。
最近は従来の資格予備校に加えて、スマホで完結できる通信講座、YouTubeの無料解説動画などもあり、社会人でも勉強しやすい環境が整ってきています。
従って、現時点では上の2問がさっぱり分からない方でも、コツコツ勉強を続けていく気力さえあればなんとかなる(はず)です。
なお抽象的で分かりづらい「企業経営理論」の問題をさらに経験してみたい方というは、下記の記事も読んでみてください。
運も必要?2次筆記試験の採点はブラックボックス
そして問題は2次筆記試験です。
マークシート形式だった1次とは打って変わって、全4科目が全て記述式になります。
受験生は2000~3000字程度の与件文(架空企業のケーススタディみたいなもの)と設問を読み、指定された文字数(30~200字程度)で解答を記述します。計算が必要な問題については電卓の使用も可能です。(1次では不可)
2次筆記試験の科目は「事例」と呼ばれ、それぞれ下記をメインテーマとして出題されます。
事例Ⅰ:組織・人事
事例Ⅱ:マーケティング・流通
事例Ⅲ:生産・技術
事例Ⅳ:財務・会計
2次筆記試験でやっかいなのは、
- 公式のアナウンスはないが採点は相対評価と思われる
- 正解や採点基準は公表されない
というブラックボックス的な部分があることです。
これにより
こうすれば絶対に受かる!
といった方程式が見えづらく、正直言って合格には運もある程度は必要な気がします。
なぜなら自分なりに「良くできた!」と思っても、もっと良くできた人が他にたくさんいれば否応なしに落ちることもあり、逆に「全然ダメ」と思ってたのに合格できた、ということもあり得るからです。
このため1次試験とは対照的に、合格発表当日までは自分が受かったどうか予測しづらいのが2次筆記試験の特徴です。
まとめると、1次試験を突破した猛者のうち、相対評価により上位2割となった者だけが合格できるのが2次筆記試験ということになります。
独学の方が合格しやすい(気がする)変な試験
今回の記事は診断士試験の難易度を説明することがメインですが、ここで少し勉強法について触れます。
上に書いたように、1次試験は宅建・行政書士試験と同様に基本的には暗記ものです。
なので受験勉強の王道として
一度テキストや講座を選んだら、浮気せずにそれをやり抜く作戦
が有効です。(私もそれで受かりました)
しかし2次筆記試験は毛色が異なり、
自分に合わない勉強法でいくら頑張っても無駄
という冷酷な事実があります。
(もともと地頭というか文章の読解力が抜群に優れている人は例外として)
どんな大手の予備校の有名講師が薦める勉強法や解法であっても自分に合わないものは合わない、反対に無名のいち合格者が書いたブログが最高のヒントになったります。
このため、勉強を続けても実力が伸びない、行き詰った感がある場合は
今やってる勉強方法は正しいんだろうか?
と疑ってかかる必要があります。
どうしてそうなるかというと、試験が記述式であり、かつ限られた試験時間内に処理しなければならない情報量が多いため
- 文章を読むのが速い人/遅い人
- 解答を書くのが速い人/遅い人
- 試験終了時間の間際でも落ち着いて解答を書いたり消したりできる人/早めにいったん解答欄を埋めたい人
- 多色マーカーで与件文を整理したい人/シャーペン1本で充分な人
- 思い込みが激しい人/自分の解答を俯瞰できる人
こういった受験生ごとの個性が大きく影響します。
このため誰にでも有効な解答テクニックというのが(おそらく)ありません。この辺りのことは実際に問題をやってみた方でないと伝わりづらいと思いますが、多くの受験生が2次試験で行き詰る原因となっています。
ちなみに受験生だったときの私の傾向というかスペックは以下のようでした。
文章を読む速度:
自分では速いと思っていたが読み落としが多かった。このため意図的にスピードを落として読む必要があった。
解答を書く速度:
書くべき要点をピックアップ済であれば速い。要点未整理のまま書き出すとグダグダになる。
試験終了間際での戦闘力(?)
試験終了まで3分あれば100文字の解答でも書き直せる。終了まで2分未満であれば(プレッシャーに耐えられないので)部分的な書き直ししか無理。
与件文の整理方法
色々やってみた結果、クーピーで色分けして整理することに
思い込みの強さ
いったん「この問題のポイントはこれだ!」と思い込んでしまうと、試験時間内に頭をリセットできない。(試験後に見落としや勘違いに気付く)このため解答欄を早く埋めることにはこだわらず、解答要素の整理に時間をかけることにした。
2次筆記試験で重要なのは「解答を書くのが遅い=ダメ」ということではなく、遅いことを自覚の上で試験時間(80分)を使い切る算段ができているかどうかです。
もう一度まとめると
- テキストや講座を一度選んだら、それを信じてやり抜くのが1次試験
- 自分にあった勉強法を模索し続けるのが2次筆記試験
こんな感じになります。
50代以上は要注意!年齢別2次筆記試験の合格率
診断士試験では年齢層ごとの合格者数が公式にて毎年発表されています。
一般的には記憶力は年齢とともに低下するようなイメージがありますが、暗記がメインとなるはずの1次試験では40代までと50~60代で合格率に大差はありません、(70歳以上だとさすがに合格率は下がる)
ところが2次筆記試験の合格率は
- 20~40代では2割前後
- 50~60代では1割前後
と、大きな差があります。
この理由については色々意見がありますが、年齢が上がるにつれ思考が型にはまってしまい、問題の意図から外れた解答を書きがちなのではないか、ということが言われています。
また、2次試験では1日で全科目をこなさなければならないため、体力・集中力がネックとなるという意見もあります。
いずれにしても50代以上の受験生の方は、解答が独りよがりになっていないか、なるべく早めの段階で合格者または他の受験生のチェックを受けることをおすすめします。
私の勉強方法+利用した講座・テキストについて
私は40代後半で勉強を開始、50代に入ってから合格しました。
1次試験では
- メイン教材はスタディング
- 自信が無い科目に絞ってTACのスピード問題集で直前期に強化
受講料が低めに抑えられているスタディングと、細かい論点まで載っているスピード問題集の組合せは、今考えても中々良かったと思います。
2次試験では当初3年は引き続きスタディングとTAC(通信講座)を併用していましたが、3回不合格。その後は受講をやめて独学に切り替えています。
独学では合格者の書いたブログを片っ端から読みつつ、あれこれ試したうえで自分に合ったやり方だけを取り入れるようにしていました。その結果、2次筆記試験4回目(独学に切り替えて1年目)で合格しました。
なお、私は最初の3年で学んだことも役立った結果なので、上記の通信講座を受講したこと自体が無駄だったとは思っていません。
2次の独学で使った利用したテキスト・模試は下記の通りです。
- 過去問
- ふぞろいシリーズ
- 意思決定会計講義ノート(通称:イケカコ)
- 公開模試:MMCとTAC
1次試験とは異なり、新しいテキストを毎年購入する必要はありません。(追加するとすれば「ふぞろい」の最新版のみ)独学に切り替えた理由は、前述のように自分にあった解法を見つけない限り、この試験は永遠に受からないのではと思ったからです。
その辺りの経緯については、いずれまた別の記事で書きたいと思います。
行き詰ったら、勉強会に参加するのも有効
ちゃんと解答を書いているつもりなのに模試を受けてみると点が伸びない。これが2次筆記試験における典型的な行き詰まりです。
ここで危険なのは「自分はちゃんと解答しているのだから模試の採点がおかしい。本番では大丈夫なはず」などと思い込んでしまうことです。模試には予備校ごとの特徴というか傾向はありますが、実績のある予備校の採点が全くの的外れ、ということはありません。
今まさにこういった行き詰まりを感じているという方は、受験生支援団体が主催している勉強会に参加することが有効です。
他の受験生や、前年までの合格者の意見を聞いたり、自分の解答にコメントもらうことが大きなヒントになります。
ちなみに私は独学で合格した後、タキプロ14期として(運営側として)勉強会に参加しました。参加してみて思ったのは「もっと早く勉強会のことを知ってれば、より早く合格できたのに」ということです。
勉強会で見も知らずの人と一緒になるのは抵抗があるかもしれません。また自分の解答に対して他人からダメ出しをされれば誰だって凹むと思います。
それでも延々と不合格を続けるのと、1年でも早く合格するのと、どちらが良いかと言えば間違いなく後者です。
ということで、タキプロのHPへのリンクを貼っておきます。
→ こちら
また、過去問は公式にて公開されています。(過去15年分)
→ こちら
正解は前述の通り、1次試験のみ公式にて公開されています。
→令和6年度1次試験の正解は こちら
2次口述試験は、よっぽどやらかさなければ受かる
2次筆記試験で合格すると、最後に2次口述試験に進むことになります。
この試験は面談形式で約10分間行われ、受験生は口頭で試験官の質問(4~5問)に答えることになります。質問はその年の2次筆記試験の事例Ⅰ~Ⅳを元に出題されます。つまり、筆記試験と口述試験のセットが2次試験というわけです。
2次口述試験の質問と回答の例(⇒クリックで開きます)
試験官:
A社はいわゆる同族経営の企業にあたります。同族経営のメリット・デメリット、留意点について説明してください。
受験生:
メリットは所有と経営が一致していることにより、株式総会等を経ることなく組織再編も含めた迅速で果敢な意思決定が可能なことです。デメリットは…、留意点は…
解説:
このような感じで、1問につき2分間を目安に回答します。回答が短すぎると「他には?」と催促される場合があるようです。試験中は手元で2次筆記試験の問題その他の資料を見ることは一切できません。
ちなみにA社というのは事例Ⅰに登場する企業のことで、同様に事例Ⅱ⇒B社、事例Ⅲ⇒C社、事例Ⅳ⇒D社となります。
口述試験の準備期間は短い
令和6年度の日程では、2次筆記試験の合格発表が令和7年1月15日、口述試験実施日が同1月26日となってします。つまり発表からわずか10日程度しか空いていません。
準備期間が僅かしかないにも関わらず、欠席・遅刻、試験官に対するマナー違反といったことが無ければ、毎年ほぼ100%の受験生が合格します。
”ほぼ”というのは、質問に対して答えが全く思い浮かばず、無言で固まってしまって落第となった例が過去にあるからです。
先に書いた受験生支援団体では毎年、無料の口述試験対策セミナー開催されます。せっかく勝ち取ったチケットを無駄にしないために、セミナーで模擬面接を経験しておくことを強くオススメします。
2次口述試験に落ちた場合、または2次筆記試験に2度落ちた場合は、1次試験からやり直しとなります。こうして1次からやり直しとなった受験生を「リベンジ組」と呼んだりします。
中小企業診断士は合格までに何年?勉強時間の目安は?
前述のタキプロにて、参加メンバーに受験回数のアンケートを取ったことがあります。その結果2次試験を受験1回で突破した、いわゆる短期合格者が約半数だったと記憶しています。
約半数が短期合格できてるなら
思ったより簡単なのでは…!!
…みたいな解釈もできなくはないですが、この方たちは記憶力・文章読解力・集中力、さらに要領の良さなどを兼ね備えた、いわば「資格受験エリート」のような存在です。よく言われる「合格まで1000時間」というのも、この方たちが基準だと思ってください。
イメージ的には予備校のホームページにて、「短期合格した当校受講生の喜びの声!!」みたいに紹介されている方たちが丁度当てはまります。
一方で、私を含めて5年~10年かかった者も普通にいます。それでも集計上は短期合格者の割合が高くなるのは、長期間の受験生生活に耐えられず、断念していく方が多い結果だと推測します。
つまり合格者の約半分が資格受験エリートで、残り半数が諦めが悪かった人達(いわゆる多年度受験生)、といった感じです。そして、その陰では全体の約95%がどこかのタイミングで諦めて去っていくことになります。
受験に何年かけられるのか、どこかで見切る判断も必要
様々な要素を考えると診断士試験は
- 1次試験には科目合格がある
- 1度1次試験に受かると2次筆記試験を2度受けられる
(2度目に落ちると1次の最初からやり直し)
このような試験制度をちゃっかり活用して2次試験2回目までに合格する、時間的には勉強開始から2~3年位で結果を出せれば良し、というのが多くの方にとっての目安ではないでしょうか。
そこで合格できずに1次試験からやり直し(先ほどの「リベンジ組」)になるのは精神的&体力的にも相当キツいです。特に子供がまだ小さい家庭では、長期間に渡って勉強を続けることに対して家族が反対する可能性もあります。
そうなっても勉強を続けられるのは、この資格にこだわり・執着があり、さらに仕事や家庭環境と折り合いを何とかつけられる人に限られるのではないかと思います。
もう一つの選択 養成課程とは?
実は中小企業診断士になる上で、難関である2次試験を回避する方法があります。それが養成課程です。私は養成課程を経ていませんので、ここでは詳細には触れず簡潔にまとめます。
養成課程を経て診断士になるには
2次試験を受験する場合
1次試験→2次試験(筆記+口述)→実務補習(または実務従事)→診断士登録
養成課程を利用する場合
1次試験→養成課程→資格登録
このようになります。つまり1次試験はいずれにしても回避できません。
2次試験が回避できる=ラクというわけではない?
養成課程では、中小企業大学(東京)または指定の教育機関への通学が必要となります。従って通学の為の時間(半年~2年)とお金(200万円前後:教育機関により異なる)が必要です。
夜間通学が可能な教育機関もありますが、当然ながら仕事が定時で終わるとは限りません。事情があったとしても履修が不十分だと退学になる場合もあるようです。
また、そもそも入学するためには面接と書類選考を通過する必要があり、志願すれば通学できるというわけではありません。
お金と時間、両方を確保しなければならないのが最大のネックかと思います。
とはいえ養成課程ならではのメリットも
養成課程を修了するまでの過程で同期の方との交流が生まれます。こういった「リアルでの横のつながり」は、診断士登録後の実務でも武器になりそうです。
私は養成課程卒業生の飲み会に参加させてもらったことがありますが、卒業生同士のつながりは「勉強会で数度会っただけ」程度の2次試験突破組のそれとは別格なように感じました。もちろん、横のつながりを生かせるかはその人次第です。
というわけで、
- 2次試験突破の目途が立たない
- 反面、通学時間とお金は何とかなりそう
という場合は養成課程を検討するのも一つの方法です。
それでは今回はここまで。
※過去問の正解
・令和5年 第1次試験 企業経営理論 第1問:ウ
・令和5年 第1次試験 財務・会計 第3問:エ