【2次つまみ食い】事例Ⅳ 早めに慣れとく経営分析

こんにちは、柴山です。

今回は中小企業診断士2次試験 事例Ⅳで毎年必ず出るといってよい「経営分析」についてです。

念のため確認すると、この【2次つまみ食い】シリーズでは独学の方向けに

まだ1次を突破出来ていないが、1次の学習自体はそこそこ進んでいる(あるい一通り終わっている)

2次試験の勉強は未着手である

1次突破するまで2次を放置しておいてよいか不安を感じている

こんな方にフォーカスしていますので、1次の勉強の途中にでも目を通して頂ければと思います。ちなみにこれまで書いていませんでしたが2次試験(正確には2次筆記試験)は電卓の使用可です。使って良い電卓については公式の試験案内でご確認ください。

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経営分析とは一体何なのか

毎年の事例Ⅳ 第1問として出題されるのが、いわゆる「経営分析」の問題です。人によってはこれを財務分析と呼んだりするみたいですが、ここでは「経営分析」で統一します。

経営分析でやることは問題で与えられた、
・与件文(事例企業D社の説明文)
・財務諸表


これらを元に財務指標を分析し、なぜそうなっているかの説明文を作成する、といった流れです。実際の設問文を見た方が理解が速いと思いますので、令和6年度の事例Ⅳ 第1問を貼っておきます。(下線は私が追加しました)

せっかくの機会なので、診断士協会の公式サイトから問題の全体像を確認しておくことをオススメします。

第1問 (配点20点)
(設問 1 )
D 社の2期間の財務諸表を用いて経営分析を行い、令和3年度と比較して悪化したと考えられる財務指標を2つ(①②)、改善したと考えられる財務指標を1つ(③)取り上げ、それぞれについて、名称を⒜欄に、令和 4 年度の財務指標の値を⒝欄に記入せよ。

解答に当たっては、⒝欄の値は小数点第3位を四捨五入して、小数点第2位まで表示すること。また、⒝欄のカッコ内に単位を明記すること。

(設問 2 )
設問 1 で解答した悪化したと考えられる 2 つの財務指標のうちの 1 つを取り上げ、悪化した原因を 80 字以内で述べよ。


ここで計算する財務指標というのは、1次試験のテキストにも出てくる下記のような数字たちです。

◇収益性を分析する主な指標
・売上高総利益率 
・売上高営業利益率
・売上高経常利益率

◇安全性を分析する主な指標
・流動比率
・当座比率
・固定比率
・自己資本比率
・固定長期適合率

◇効率性を分析する主な指標
・有形固定資産回転率
・棚卸資産回転率
・売上債権回転率

◇生産性を分析する主な指標
・付加価値率(問われることは少ない)

令和5年度の場合は、令和4年度と令和3年度の財務の数字が与えられていますので、ここから財務指標を計算・比較することになります。(年によっては過去のD社ではなく競合他社と比較して分析するパターンもあります)

え?ということは上にあるような指標を全部計算するの?

ということに気が付いた貴方、鋭いですね。その通りです。もちろん問題により、上の指標を全部計算する必要が無い場合もあります。

試験本番での解き方としては
①主だった指標を全て算出してから、令和4年度、3年度を比較する
②怪しそうな指標に目星をつけて、そこのみ計算、比較する

以上2通りのやり方が考えられますが、私が受験生だった時は基本的に前者のやり方をしていました。一見すると②の方が効率が良さそうですが、実際に模試などでやってみると手順が決まっている①の方が精神的に楽です。

経営分析を早めに「つまみ食い」しておくべき理由

2次試験の最後の難関である事例Ⅳの中で、経営分析は明確な得点源です。最終合格者の中に事例Ⅳが苦手という方はたくさんいるはず(というか多数派)ですが、経営分析が苦手という人はほどんどいないと思います。

ということで、2次試験を突破するために経営分析の問題に早めに慣れておいて損は無いです。試験本番では限られた時間内で解かなくてはいけないので、電卓を使いこなして短時間で計算する練習が必須です。

ここで先に挙げた令和5年度 事例Ⅳ 第一問について、必要な計算の一部をやってみることにします。

令和5年度 事例Ⅳより D社 令和4年度の損益計算書(単位:千円)

売上高4,547,908
売上原価1,743,821
売上総利益2,804,087
販売費及び一般管理費2,277,050
 営業利益527,037
営業外収益11,608
営業外費用1,613
経常利益537,032
特別利益
特別損失
 税引前当期純利益537,032
法人税等169,072
 当期純利益367,960

計算を一部やってみる

ここでは上の表にある数字を元に、D社の収益性に関わる以下3つの指標を計算することにします。

・売上高総利益率
・売上高営業利益率
・売上高経常利益率

では、効率よく数字を得るにはどうすれば良いでしょうか?

実は、電卓のメモリ機能と定数計算機能を組み合わせると、下記の5工程で導き出すことができます。

① 4,547,908÷ 100 =
② 「M+」ボタン押し
③ 2,804,087 ÷「RM」ボタン押し = →売上高総利益率(%)
④  527,037= →売上高営業利益率(%)
⑤  537,032 = →売上高経常利益率(%)

最初に売上高を100で割るのは、計算結果がそのままパーセントの数字となるようにするためです。①~⑥の工程の途中でクリアボタンを押さないようにしてください。電卓の機種にもよりますが、上に書いた以外のボタン操作は不要なはずです。

一応、計算結果です。
指示にある通り、小数点以下第3位を四捨五入しています。
・売上高総利益率 61.66%
・売上高営業利益率 11.59%
・売上高経常利益率 11.81%

当然ながら試験本番では電卓の説明書を見ることなどできないので、何も考えなくてもメモリ機能などを使いこなせるようになっておく必要があります。経営分析を得点源にするうえで最初に必要なのは、とにかく電卓を使いこなすことです。

1次が終わってから2次までの時間は3か月弱。
1次試験が終わってから計算の練習を始めるのと、それ以前から始めておくのでは精神的な余裕がかなり違うと思います。これがつまり、経営分析の問題を早めに経験しておくべき理由です。

計算が終わったら設問に合致する指標を選ぶ

令和4年度、令和3年度のD社の財務指標の計算が終わったら、そこから問題の指示に合った数字をピックアップします。(下記、数字は令和3年度→令和4年度の順)

悪化している指標
・売上高営業利益率:16.99% → 11.59%★
・有形固定資産回転率:89.83回 → 71.90回★

改善された指標
・当座比率:197.22% → 311.97%★

★印をつけたのが解答欄に書くべき数字となります。

どの指標を選ぶべきなのか ~正解は1つではない?~

中小企業診断士の2次試験では正解が公式には発表されず、受験生には合否の結果と得点だけが通知されます。

かといって正解は全く不明ということではなく、予備校によりこの問題はこう書いた受験生が点をもらっているようだみたいな分析が行われます。

それにより分かっているのは、経営分析の問題で選ぶべき財務指標は1つとは限らず、妥当性が高いものを選んでいれば得点できているのではないか、ということです。

令和5年度の問題でも、悪化している指標を2つ選べという指示に対して
・売上高営業利益率
・有形固定資産回転率
この2つを解答候補として選んでいますが、売上高営業利益率の代わりに売上高総利益率を選んでいても得点できる可能性はあります。とはいえ試験本番では少しでも得点の可能性が高いものを選びたいので、与件文にも着目すると…

直近では、実店舗やネット上での同業他社との競争激化により販売が低迷してきており、このままでは売上高がさらに減少する可能性が高いと予想される。また、今後は、輸送コストが高騰し、原材料等の仕入原価が上昇すると予想される。しかし、D社では、将来の成長を見込んで、当面は人件費等の削減は行わない方針である。

与件文によると売上が低下しているのに、
①輸送コストと仕入れ原価が上昇
②人件費の削減は行わない
ということなので、ここはやはり売上高営業利益率を選んでおくのが妥当性が高いはずです。

これがもし与件文にて人件費の事が触れられておらず、輸送コストと仕入れ原価の上昇のみが問題視されているのであれば、売上高総利益率を選ぶ方が妥当性は高いかと思います。

複数選ぶ際はカテゴリーに注意

ここで、令和5年度の経営分析の場合であれば

悪化したと考えられる財務指標を2つ解答せよ

という指示なんだから、売上高営業利益率売上高総利益率の2つとも選んでおけばいいじゃん、という考え方もあり得ます。が、これは(公式見解はないものの)あまり良くないとされています。

この記事の前半で財務指標をまとめて紹介した際に、下記のカテゴリーに分けました。
・収益性を分析する主な指標
・安全性を分析する主な指標
・効率性を分析する主な指標
・生産性を分析する主な指標


悪化を示す(または改善を示す)指標を複数挙げよ、という場合は収益性を分析する指標ばかり選ぶのではなく、収益性の指標+効率性の指標といった感じで、多角的な分析になっている方が解答として手堅い、とされています。

結局、2次試験の勉強はいつから始めるのが正解?

中小企業診断士の2次試験を受ける場合、下記2パターンあります。

①1次試験を合格して同年の2次試験を受ける
②前年に1次試験合格済みで今年は2次試験だけ


①と②で比べた場合、①の方がスケジュール的に大変なのは言うまでもありません。この場合、1次が終わってからヨーイドンで2次の勉強を開始するよりも、それ以前から2次の問題に触れておいた方が間違いなく勉強は捗るはずです。

ということで、来年こそ1次突破を、そして2次も、とお考えの方は事例Ⅳに限らず積極的に2次試験の問題をつまみ食いして欲しいと思います。

それでは、今回はここまで。

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