こんにちは、柴山です。
今回は中小企業診断士2次試験の事例Ⅳ キャッシュフロー(以下「CF」)計算書の問題の解説をします。
1次試験に向けて勉強中だけれど、2次試験について全くの未着手のままでは不安、という方(主に独学の方)向けの記事です。また、早いうちから2次の問題を触ってみることで、テキストの内容や1次の問題に対して理解が深まることも狙いの1つです。
前提①
この【2次つまみ食い】シリーズでは1次試験の勉強はある程度は進んでいる人を対象にしていますので、テキストにある解説を丸ごと載せるようなことはしません。
私が受験生時代にテキストを読んで、
なんか良く分からん
と思ったことを私なりの言葉と表現で解説しています。
前提②
CFを求める方法には直接法、間接法の2通りがありますが、2次試験ではさかのぼって確認できる限りの過去問全てで間接法で問われています。このためここでは直接法については触れないことにします。
なお、損益計算の問題をまだやっていない方は先にそちら(下記記事)から見てください。
ところで事例ⅣでのCF計算書の出題頻度は?
損益計算書に続き、最近の2次試験では直接的にCF計算書を作成する(またはCF計算書の空欄を埋める)問題の出題頻度は低いです。過去問をさかのぼってみたところ、平成28年に出題されたきりのようです。
とはいえ、本試験でCF計算書を作成することが無くともCFの考え方は分かっている必要があります。それは何故かといえば…
図解
CF計算ができないと何がマズイのか!?
CF計算書を作成または穴埋めする問題 ⇩ できない | NPV(意思決定会計)の問題 ⇩ 当然のようにできない | その他の関連問題 企業価値の計算など ⇩ できる訳がない |
ということで、分かっていないと事例Ⅳでは勝負にならないので、しっかり定着させていきましょう。
CF計算書は大きく3つに分かれる
まず基礎知識として、CF計算書は営業CF・投資CF・財務CFの3つに分かれます。
その上で
- 営業CFはその企業本来の営業活動
- 投資CFは固定資産や有価証券の売買など投資活動
- 財務CFは借入・返済・配当など財務活動
それぞれの活動によるキャッシュフローを記述することになります。その中でも、今回は処理しなければならない情報が最も多い営業CFをメインに解説します。
間接法の特徴である「足したり引いたり」の感覚がつかめるきっかけになれば幸いです。
営業活動によるCF ①:売掛・買掛編
さて、ここから間接法によるCF計算書を解説していきます。
私が受験生時代にテキストを読んで分かりづらいと思ったのが、CFの計算途中で様々な項目を足したり引いたりする意味です。自分が受験する上では「そういう風に決まっているんだから仕方ない」と割り切って暗記で乗り切ったのですが、今回は試みとしてその辺りの解説を会話形式にしてみました。
傍らに皆さんの手持ちテキストをおき、テキストの説明と比べながら読み進んでみてください。テキストの理解につながれば幸いです。
とある会社にて、社長と経理担当の会話
よっしゃあ!今期1億円儲かったぞ!
ここから税金で3割払って、残りで豪華クルーザーでも買ったろ!
いや社長、現金が7000万円増えた訳じゃないっす。
どういうこと?
まず売上のうち掛売(売上債権)分の入金はまだです
現金がどれだけ増えたのか知りたいなら、税引前当期純利益から売上債権の増加分(=今期分の掛売)を引かないと
お、おう
あと在庫(棚卸資産)が増えてたら、その分CFはマイナスになります。
なんで?
損益計算書では当期の利益を仕入原価ではなく売上原価で計算します。
例えば100万円分の原材料を現金100万円で仕入れても、それだけでは損益は発生しません。(=損益計算書にはあらわれない)
そりゃそうだ。
お金が原材料に置き換わっただけだから、仕入れただけでは損益は発生しない。
でも、仕入れた以上は現金は減っています。
だから損益計算上の当期純利益(税引前)から、在庫が増えた分の金額を引かないといけないんですよ。
そうしないと現金の動きを把握できないのか…
せっかく儲かったと思ったのに、思ったほど現金は増えないんだな
(しょんぼり)
ただし、棚卸資産が増えたといっても、その分まるまる現金が減ったわけではないです。
そうか!支払いが当期でない分があるから…
そう、在庫が増えても買掛(仕入債務)となっている分の支払いは来期以降です。ですので棚卸資産の増加分から仕入債務の増加分をマイナスした金額だけ現金が減ったことになります。
だったら売上債権の回収はなるべく早く(今期に)、仕入債務の支払いはなるべく遅く(来期以降に)した方がCF上は有利なワケか…
支払いは遅ければ遅いほど…(ぶつぶつ)
それはそうですけど、取引先から嫌われますよ…
営業活動によるCF ②:減価償却編
あと、当期利益の計算の際には売上高からマイナスしましたけど、実際には現金が減ってない勘定科目があります。
それは何かね?
減価償却費です。
この分の金額を誰かに払っているワケではないですよね?
だからCFを計算するうえでは減価償却費を足し戻してあげないと…
ややこしいな。
ま、それでCFがプラスになるならいいけど
営業活動によるCF ③:「小計」以降の足したり引いたり
ここからまだ調整が要ります
なんで?
CF計算では
・営業活動によるCF
・財務活動によるCF
・投資活動によるCF
の3つに分けて計算することになってるんで
誰が決めたんだ?そんな面倒くさいこと
多分どっかの偉い人じゃないですかね(適当)?
例えば全体ではCFがプラス(現金が増えた)となっていても本業が全然ダメで、資産収入でなんとかなっている場合もあり得るじゃないですか?その辺をちゃんと確認できるようにしたいのではないかと。
ウチは資産収入なんかないぞ
ウチの会社はそうでも、上場企業だと投資不動産を持ってたりするのでCF計算書の作成義務があるんですよ。
ウチの会社だけ独自ルールでCF計算書を作るワケにもいかないので、あきらめて一般的なやり方で作りましょう。
面倒くさいが、やむをえん
まず、営業外収益、営業外費用を取り除いて小計を出します。この数字(小計)がウチの本業でのCFの増減を表します。
ふむふむ
で、ここ(小計)から改めて利息や配当金の受領額をプラスし、支払い利息分をマイナスします。
ちょっと待て!
その金額はさっきの「小計」を出すときに営業外収益・営業外費用としてCFから除外したばかりだ。俺の目は誤魔化せんぞ!
おっしゃる通りです。
本来これら数字は財務活動(お金を借りたり貸したり)にまつわるものです。
でも何故か「財務活動によるCF」ではなく、ここに入れることになっていますので、そういうもんだと思って諦めてください。
くっそー、どこの誰とも分からない奴の言いなりになるしかないのか
で、最後に法人税の支払額をマイナスすると
「営業活動によるCF」となります。
なお前期から繰り越された未払税金を支払った場合は現金が減ります。
今期払わなかった税金があればその分だけ現金は増えます。
ウチは税金の未払なんでないから、関係なさそうだな
とにかく、これでやっと「営業活動によるCF」の計算が終わったことになります。
ちなみに土地など資産の売買により特別利益(損失)があるとそれも計算に入れないと(あるいは除外しないと)いけません。
ウチの会社では売るような資産もこれといって無いし、ここも関係無さそうだな
財務活動によるCF:お金を借りたり、払ったり
次に「財務活動によるCF」ですが、これは割と簡単です。
ホントか?本当に簡単なのか?(疑いの目)
ホントです。
お金を借りると手元の現金が増え、返済すると現金は減ります。
そりゃそうだ
あと、株を発行すると現金は増え、株主に配当を払うと現金は減ります。
それも当然だな
「財務活動によるCF」の計算は以上です。
ホントに簡単だった
投資活動によるCF:特別利益・特別損失の発生源
で、最後に「投資活動によるCF」です。
やっと最後か…
固定資産や有価証券を売買した場合、
・購入する → CFがマイナス(現金が減る)
・売却する → CFがプラス(現金が増える)
となります。
なんだ簡単ではないか
これだけならそうですけど、評価額より高く土地が売れたり、逆に安くしか売れなかったりすると、特別利益や特別損失が発生します。
が、ややこしくなるのと今回解説する過去問(⇩)には必要無いので説明を割愛します。
実践編:平成23年度2次試験 第1問(設問2-a)
問題の詳細は公式サイトより確認してください。
D社の平成21年度(前期)末、平成22年度(今期)末それぞれの貸借対照表および平成22年度の損益計算書を元に営業活動によるCFを作成します。なお、財務諸表から単に転記するだけの項目は先に埋めてあります。
(単位:百万円)
税引前当期純利益 | 15 |
減価償却費 | ① |
営業外収益 | -5 |
営業外費用 | 40 |
売上債権の増減額 | ② |
棚卸資産の増減額 | ③ |
仕入債務の増減額 | ④ |
その他固定負債の増減額※ | ⑤ |
小計 | ⑥ |
利息の受取額 | 5 |
利息の支払額 | -40 |
法人税等の支払額(注意!) | ⑦ |
営業活動によるCF | ⑧ |
それでは順番に計算します。
①減価償却費
累計額が前期-468百万円 → 今期-490百万円に増えてますので、差額22百万円が今期の減価償却費です。
②売上債権(受取手形・売掛金)の増減額
累計額が前期339百万円 → 今期360百万円に増えてますので、差額21百万円が今期の売上債権です。
(この分をCFからマイナスします)
③棚卸資産(受取手形・売掛金)の増減額
累計額が前期377百万円 → 今期368百万円に減っていますので、差額9百万円です。
(この分をCFにプラスします)
④仕入債務(支払手形・買掛金)の増減額
累計額が前期298百万円 → 今期285百万円に減っていますので、差額13百万円です。
(この分をCFからマイナスします)
⑤その他固定債務の増減額※
これが一体何なのか、営業活動によりCFに入れるべきものなのか不明です。(診断士試験では必要な全ての情報が与えられない場合があります)が、ここでは営業活動によるCFとして計算します。
累計額が前期24百万円 → 今期22百万円に減っていますので、差額2百万円です。
(負債が減ったということは支払ったということなのでCFからマイナスします)
⑥小計
15+22-5+40-21+9-13-2=45
⑦法人税等の支払額
ここが引っ掛けポイントです。今期の損益計算書を見ると(今期の)法人税等は6百万円です。
ただし、貸借対照表を確認すると「未払法人税等」の項目が
前期2百万円 → 今期4百万円に2百万円増加しています。
未払が増えたということは、その分だけ今期払っていないということなので
6百万円-2百万円=4百万円
これが今期の「法人税等の支払額」です。
(この分をCFからマイナスします)
⑧営業活動によるCF
小計(⑥)以降で計算します。
45+5-40-4=6
これで必要な値が全て揃いました。
(単位:百万円)
税引前当期純利益 | 15 |
減価償却費 | 22 |
営業外収益 | -5 |
営業外費用 | 40 |
売上債権の増減額 | -21 |
棚卸資産の増減額 | 9 |
仕入債務の増減額 | -13 |
その他固定負債の増減額※ | -2 |
小計 | 45 |
利息の受取額 | 5 |
利息の支払額 | -40 |
法人税等の支払額(注意!) | -4 |
営業活動によるCF | 6 |
この先にあるものは?
いかかでしたでしょうか?まだ1次試験の勉強中の方にとってのCF計算書は、いったんここまで解ければ充分ではないかと思います。
最初の方にも書きましたが、キャッシュフローが分かるようになった先には
- NPV(正味現在価値)の計算を含む意思決定会計
- 企業価値の計算(CFが一定の場合と成長する場合)
などが控えています。
特に意思決定会計は事例Ⅳで最大の、あるいは2次試験全体で最も難所と言っても差し支えない論点です。1次試験が終わった時点でCF計算に抵抗が無くなっていれば、この辺りに取り組む上でのアドバンテージにもなるはずです。
それでは今回はここまで。