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こんにちは、柴山です。
仕事を抱え込みがちなAさんと、周囲の人たちの会話
ある日:
同僚:「忙しそうだけど、大丈夫?何か手伝えることある?」
Aさん:「ありがとう。でも大丈夫、何とかやるよ。」
同僚:「分担できることがあれば、遠慮なく言ってね。」
翌日:
上司:「Aさんだけ残業が多いので、チームで分担をしないと…」
同僚:「はぁ、声掛けはしてるんですが…(だって本人も大丈夫って言ってるし)」
今回は、こんな感じで仕事を抱え込んでしまう人(本人)がどうすれば良いか、ではなく、周囲がどのように対処すべきかを考えてみます。
なぜ本人ではなく周囲の人の問題として考えるのかと言えば、本人は既に一杯一杯のはずなので、主に問われるべきなのは上司や同僚の対応だからです。
特定の人が仕事を抱え込んでしまう弊害
まず、チーム内で特定の人が仕事を抱え込んでしまう弊害について整理しておきます。
一見、強い責任感の現れのように思える「仕事を抱え込む」行動ですが、チーム全体に迷惑をかけたり、生産性や雰囲気に悪影響を及ぼすリスクがあります。
納期が遅れる危険性
一人では処理できる仕事に限界があるため、タスクが滞り、納期に間に合わなくなるリスクが高まります。
特に複数の案件を同時進行している場合、優先順位の判断ミスや、突発的なトラブル対応でスケジュールが大幅に遅れる可能性があります。
発覚した時点で既にリカバリー不能なほどの遅れとなっていることもあり、クライアントからの信頼低下にもつながるため注意が必要です。
業務がブラックボックス化するリスク
仕事を抱え込む人の担当案件は、いわゆるブラックボックス化しがちです。
そのため、急な病欠や退職が有った際に
「誰も内容が分からない」
「引き継ぎができない」
といった問題が発生します。
ちなみに私は住宅業界にいた経験がありますが、住宅を購入した人、購入を検討している人が集まるネット掲示板を見ると、

質問者(購入を検討中):
○○住宅で家を建てたいと思っています。
購入された方、いかがでしょうか?
解答者(購入済み):
○○住宅で家を建てました。
床鳴りがひどくてクレームを入れたのに
「担当者が退職したので分かりません」と言われました。
アフターが最悪なので、絶対やめた方がいいです!

こういったやりとりが日常的にされています。退職はしていなかったとしても、担当者不在だと何も分からないようでは、やはり問題です。
本人は仕事を頑張っているつもりだとしても、このようなブラックボックスを作ってしまうと、会社の信用を落とす原因となりかねません。
他の人の成長を妨げる
仕事を抱え込むことで、他のメンバーに仕事を任せる機会が減ってしまうため、チーム全体のスキルアップや経験値の向上が妨げられ、組織としての成長が停滞します。
また、周囲のメンバーが「自分は頼りにされていない」と感じ、モチベーション低下につながることもあります。
仕事を抱え込んでしまう人の心理
仕事を抱え込む人は、ただ単に「他人に頼むのが苦手」という場合も有りますが、心の中で仕事への責任感、周囲との関係性や自己評価、承認欲求などが複雑に絡み合っていることも考えられます。
とはいえ、あまり複雑に考え過ぎても対策が見えなくなるため、ここでは仕事を抱え込む主な理由として
- 周囲に気を使いすぎて頼れない
- プライドが高く、「この仕事は人に自分でないとダメ」と思っている
- 頑張っている自分をアピールしたい
以上の3つを想定してみます。
①周囲に気を使い過ぎでヘルプを頼めない
「忙しそうだから頼みづらい」
「迷惑をかけたくない」
といった気遣いから、周囲にヘルプを求められない人は多いです。
このタイプは本来はチームで助け合うべき場面でも1人で抱え込んでしまう傾向が強く、自分の限界を超えてしまいがちです。
このタイプの特徴:
- 他人の負担を気にしすぎる
- 自分の限界まで(あるいは限界を超えて)仕事を抱えてしまう
②プライドが高い
「この仕事は他に人には任せられない」
「自分のやり方が一番正しい」
といった強いプライドやこだわりも、仕事を抱え込む原因の一つです。
このタイプは、完璧主義や責任感の強さが裏目に出て、結果的に自分を追い込んでしまう傾向があります。
周囲からは
「頼りになるが、融通が利かない」
「とっつきにくい」
と見られることがあります。
また、他人に任せることでクオリティが下がるのを必要以上に気にしたりします。
自分の仕事ぶりに(スピードはともかくクオリティに)自信を持っている一方で、他のチームメンバーとの信頼関係が出来ていないのが問題です。
このタイプの特徴:
- 完璧主義
- 他人に任せるのが不安
- 周囲の人を信頼していない
③頑張っているアピールをしたい
「自分はこんなに頑張っている」と周囲に認められたい、評価されたいという承認欲求も、仕事を抱え込む大きな動機となります。
常に忙しそうにしていることで
「頼りになる」
「頑張り屋」
と思われたい気持ちが強く、無理をしてでも仕事を引き受けてしまいます。
このタイプは、やむなく仕事を抱え込んでいるというより、自ら望んでそうしているという見方もできます。せっかく後輩社員が入社したのに仕事を渡そうとしない、などの行動が特徴的です。
また、自分にしかできない仕事があることを自分の存在意義のように考える傾向があり、放置しておくと業務のブラックボックス化につながります。

プライドの高さ+承認欲求の合体形態
この仕事は、仕事が出来て頑張り屋の俺にしか無理だね!
(だから、みんな俺を見ろ!)
こういった過度なアピールは往々にして逆効果となり、周囲から認められるよりも、むしろ壁を作ってしまうかもしれません。
このタイプの特徴:
- 承認欲求が強い
- 評価されたい気持ちが強い
- 他人に仕事を(遠慮ではなく)渡したがらない
仕事を抱え込んでしまう人への向き合い方と対策
大抵の場合、仕事を抱え込む人に対して
「もっと周りを頼って」
と、正論を伝えるだけでは解決にはなりません。
なぜなら、そもそもそれが出来ないからこそ現在の状況があるからです。
「大丈夫?」と聞くことも悪手
さらに
「大丈夫?」
と聞くことも、あまり意味がないということを覚えておいてください。
なぜなら人間は「大丈夫?」と聞かれると、無理をしてでも反射的に「大丈夫」と返答してしまうからです。
特に仕事を常時抱え込み、半ば意地になっている人に対して
大丈夫?+もっと周囲を頼れ
のコンボは感情的な反発を招いてしまう可能性があります。

同様の理由で、交通事故に遭った人にも「大丈夫ですか?」と聞くより、
「どこが痛みますか?」のように聞くべきだと思います。
では、どうするかというと…
本人の心理や背景を完全に理解することは不可能ではあるものの、
- 日々の声掛けで承認欲求を満たす
- 他人を頼ってでも完了させることを期待していると伝える
- ブラックボックス化のリスクを伝える
- チームでの進捗管理
などの対処法を講じることで、改善できる可能性が有ります。
①まずは日々の声掛けから
営業や製品開発などの担当であれば、目に見える業績がそのまま自分評価や自信につながります。
一方、事務など間接業務担当の場合、社内で「自分が頼られている感」があることが自己評価に結びつく傾向があります。

事務スタッフで仕事を抱え込む人は、口には出さなくとも周囲からの評価や感謝を求めているかもしれません。
そこでまずは、
「いつも助かっている」
「ありがとう」
といった、普段からの声掛けにより承認欲求を満たしてあげることが大切です。
その上で、無理をしすぎていないか気遣いの声をかけることで、本人も安心して周囲に頼れるようになります。これは地味ですが重要なプロセスです。
②「抱え込む」ことではなく「完了させる」ことを期待していることを伝える
仕事を任せる際は、
「自分で全部やること」
ではなく、
「他人に頼ってでも期日にまでに完了させる」
ことを期待していると伝えることが大切です。
役割分担や協力体制の重要性を理解してもらうことが、抱え込みの解消につながります。
③ブラックボックス化のリスクを伝える
ブラックボックス化のリスクについては先に述べた通りです。
ただし、あくまで①の「普段からの声掛け」により
「自分はここで認められている、頼られているんだ」
と、本人に実感してもらうことが先決です。
心理的安全性の実感が無い状態で
「他人を頼ってでも期日までに完了することがうんぬん」
「業務のブラックボックス化がうんぬん」
と理屈だけ説明しても、おそらく効果は薄いと思われます。
④進捗をチーム全体で管理する
個人任せにせず、チーム全体で進捗を見える化することは、最も根本的な解決策です。

抱え込みはダメ!絶対!
定期的なミーティングなどで、誰がどの仕事をどこまで進めているかを全員で把握します。また、業務の工程を分解して、抱え込んでいた業務の前工程、後工程を別の人に渡すなどの工夫も必要です。
これにより、抱え込みの早期発見や、適切なサポートがしやすくなります。
上司が抱え込むタイプだった場合の対策は?
ここまでは主に部下が「抱え込むタイプ」だった場合の対処法でした。
では、上司がこのタイプだったらどうなるのでしょうか?
正直なところ、部下の立場から上司の行動を変えるのはかなり難しいと思います。
それでも何とかしてあげたいと思うのであれば…、
- 「大丈夫ですか?」と聞くのはここでも禁句
- 「何か手伝うことはありますか?」と尋ねるよりも「この資料作成をやってみたいです」のように「やってみたいアピール」をしてみる
- 手伝うことになった場合は、こまめに進捗報告することで安心してもらう
こういった対策が有効かもしれません。
まとめ:正論では人は動かない場合もある
世の中には、トラブルにでもならない限り部下の業務にほとんど関心が無い上司もいます。
真面目に上司としての仕事に取り組んでいる人からすれば、「そんなことで仕事が回るのか?」と思うかもしれませんが、
- 自分が赴任した時点で業務フローが確立されていた
- サブリーダー的な人に丸投げすることで、何とかなってしまっている
…みたいなことは普通にあるはずです。
この記事をここまで読んで頂いた方は、おそらくそういった無関心タイプの上司ではないはずなので、その部下の方はある意味恵まれた環境にいると思います。
繰り返しになりますが、仕事を抱え込んでしまう人、特にそれが常態になっている人に対して
「無理そうだったら、遠慮なく言ってね」
といった「正論」を伝えるだけでは、本人の行動が変わることはあまり期待できません。
時間はかかっても本人の気持ちに寄り添いながら、適切なサポートや仕組みを整えることが大切です。
ということで、今回はここまで。