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こんにちは、柴山です。
中小企業診断士、またはその受験生の方は既にご存じの方も多いかと思いますが、補助金申請支援に関する法改正が、間もなく施行されます。
2025年5月30日に衆議院で、同年6月6日には参議院で可決・成立した「行政書士法の一部を改正する法律」は、2026年1月1日から施行されることが決まりました。 この改正は、補助金申請を検討している事業者の方々にとっても、知っておくべき重要な内容です。
衆議院ホームページ: 議案名:行政書士法の一部を改正する法律案
そこで、現時点で調べて分かる範囲の情報についてまとめてみました。
法改正のポイント:補助金申請書作成は行政書士の専門業務へ
今回の法改正の最も大きなポイントは、報酬を得て補助金申請書などの行政手続きに関する書類を作成したり、その提出を代行したりする業務が、行政書士の専門業務としてより明確に位置づけられたことです。
これまでに「コンサルティング料」などの名目で実質的に補助金申請書の作成を行ったり、不適切なアドバイスをしたり、過度に高額な料金の請求する業者が見受けられたようです。トラブルを防ぎ、事業者の方が安心して補助金申請を行えるようにすることが、今回の法改正の意図と思われます。
具体的に何が変わるのか?
無資格者による有償の書類作成・提出代行が禁止に:
2026年1月1日以降は、行政書士の資格を持たない人が、報酬を受け取って(名目が何であっても)、補助金申請書などの書類を作成したり、提出を代行したりすることは、法律で禁じられます。電子申請の代行も含まれます。
「事業計画書」も注意が必要:
一般的な事業計画書の作成は問題ありませんが、補助金申請のフォーマットに沿って、特定の補助金の採択を目的として作成される「事業計画書」は、実質的に補助金申請書類の一部とみなされる可能性が高いです。この場合も、行政書士の専門業務に該当すると考えられます。
以下に事例を作ってみました。
事例:
A社の社長は画期的な新規事業にチャレンジする予定である。
新規事業「Z世代の部下が何を言っているのかさっぱり分からない人向け、翻訳アプリ」
Trans-GenerationZ(トランスジェネレーションZ) を開発
このアプリの市場規模、競合、ターゲット顧客、必要な投資額などを調査・分析
さらに、この調査・分析の成果物としての事業計画書(以下、「計画書A」)を作成
⇒中小企業診断士が行っても問題無し
この事業について補助金申請を行うための事業計画書(同、「計画書B」)を、報酬を得て作成
⇒行政書士以外が行うことは不可
ざっくりとですが、こうなるはずです。
とはいえ、普通に考えて計画書Aが計画書Bの「たたき台」としての役割を持つだろうことは明らかです。今後、中小企業診断士が申請書類を作成することが無くなっても、事業計画自体の立案で果たす役割は依然として大きいはずです。
士業への影響と今後の動き
各立場ごとに、どのような変化となるかをまとめてみました。
これまで補助金申請をサポートしていた、中小企業診断士の場合
中小企業診断士は経営コンサルティングで唯一の国家資格として、事業計画の策定や経営改善のアドバイスなどを行います。
補助金申請においても事業計画作成や市場分析が欠かせないことから、多くの方が申請サポートを業務として行っているようです。
影響:
2026年1月1日以降は、補助金申請書の「作成」や「提出代行」そのものを報酬を得て行うことができなくなります。
今後の対応:
引き続き、経営戦略の立案、事業計画のブラッシュアップ、補助金活用のアドバイスなど、経営コンサルティングに特化してサポートを行うことは可能です。
申請書の作成や提出代行については、行政書士との連携が必要となります。今後は行政書士との連携によって、「ワンストップサービス」の仕組み作りを図る中小企業診断士が増えていくことが予想されます。
また、社労士その他コンサルタントなど、行政書士以外で補助金申請サポートを行っていた方たちの場合も同様となります。
これまで補助金申請をサポートしていた、行政書士の場合
行政書士は、今回の法改正で、その専門性が改めて明確に認められることになります。
影響:
補助金申請業務が行政書士の明確な専門業務となるため、この分野に参入する行政書士が増えると予想されます。
今後の対応:
補助金申請に関する専門家としての需要が高まるため、最新の補助金情報を学び、電子申請への対応力も高めていくことが求められます。
これまで補助金申請をサポートしていなかった、行政書士の場合
影響:
新たな業務分野として、補助金申請支援に参入するチャンスが広がります。
今後の対応:
補助金に関する知識やノウハウを習得することで、新たな事業の柱を築くことができます。事業計画立案などのノウハウが不足している場合は、中小企業診断士など他の専門家との連携を模索することも有効な戦略となるでしょう。
事業者向け:補助金申請支援を依頼する際のポイント
今回の法改正は、事業者の方がより安心して専門家に補助金申請の支援を依頼できる環境を整えるものです。
経営全般や新規事業計画についてのアドバイスは?:
事業計画の策定や経営に関するアドバイスを受けたい場合は、中小企業診断士などの経営コンサルタントに相談しましょう。
補助金申請手続きは?:
申請書作成、提出手続きまでを依頼したい場合は、行政書士に依頼する必要がある、ということを覚えておきましょう。
複数の専門家との連携も選択肢に:
今後は、中小企業診断士が経営コンサルティングを行い、行政書士が申請書作成を行う、といった専門家同士の連携による支援が増えてくる可能性があります。ご自身のニーズに合わせて、最適な専門家チームを探すことも検討しましょう。
不審な業者には注意:
「補助金は申請すれば必ずもらえると宣伝している」
「高額な手数料を請求する」
といった業者には引き続き注意が必要です。
報酬を得て申請書作成を行うことができるのは行政書士のみです。資格の有無を必ず確認しましょう。
行政書士になるには?:資格制度など解説
今回の法改正を受け、中小企業診断士の資格者を含めて、新たに行政書士の資格取得にチャレンジする方が増える可能性があります。そこで、行政書士の業務や試験制度などについてまとめてみました。
行政書士の業務
主な仕事は、官公署(国や地方公共団体の役所)に提出する書類の作成や提出代行、権利義務や事実証明に関する書類の作成、およびその相談業務です。その業務範囲は非常に広く、国民の生活や企業の事業活動を円滑に進めるために不可欠な存在です。
行政書士になるには?
行政書士になるためには、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 行政書士試験に合格する
- 弁護士、弁理士、公認会計士、税理士のいずれかの資格を持つ
- 国または地方公共団体の公務員として行政事務を担当した期間が20年以上(高卒以上の場合は17年以上)
一般的には、行政書士試験に合格することが最も一般的なルートです。
行政書士試験の概要
試験制度や合格率についてまとめました。なお最新情報は公式サイトでご確認ください。
受験資格:年齢・学歴・国籍による制限はありません。
実施時期:
- 例年11月の第2日曜日(年に1回)
- 翌年1月末に合格発表
試験科目:
- 法令等(憲法、行政法、民法、商法、基礎法学)
- 一般知識等(政治・経済・社会、情報通信・個人情報保護、文章理解)
出題形式
- 選択(マークシート)式 57問
- 記述式 3問
合格基準:
- 法令等科目で122点以上(244点満点中)
- 一般知識等科目で24点以上(56点満点中)
- 全体で180点以上(300点満点中)
- 試験は絶対評価であり、毎年合格者数を調整する相対評価ではありません。ただし、合格基準点以上の受験者が極端に少ない場合は、その年の問題の難易度などを考慮して、合格基準点が調整される可能性はあります。
難易度について:
- 合格率:10%程度
- 試験範囲には法令科目だけではなく、一般知識も含まれる(試験範囲が明確でない部分がある)
- 暗記だけでは対応できない記述式問題がある
- 勉強時間の目安:一般的に合格までには約600時間~1000時間
行政書士として活動するには
行政書士試験に合格しただけでは、「行政書士」と名乗って業務を行うことはできず、以下の手続きが必要です。
- 登録手続き:
- 試験合格後、日本行政書士会連合会を通じて、所属する都道府県の行政書士会に登録する必要があります。
- 登録には所定の登録料や会費が必要です。※
- 登録が完了すると、行政書士として正式に活動できる行政書士登録証が交付されます。
登録手続きには1か月半~2か月かかるとされています。
- 事務所の開設:
- 行政書士として業務を行うためには、原則として事務所を構える必要があります(自宅兼事務所も可能)。
- 所属する行政書士会によっては、事務所の設備に関する要件が定められている場合もあります。
(書類を保管するための鍵付きキャビネットがある、等)
- 継続的な学習と情報収集:
- 法律は常に改正されたり、新しい制度が生まれたりします。また、補助金などの制度も頻繁に更新されます。
- 行政書士として専門性を維持・向上させるためには、常に最新の情報を学び、知識の更新が必要です。
- 各行政書士会では、研修会なども頻繁に開催されており、これらに参加することも重要です。
※登録にかかる初期費用について
各都道府県により行政書士会への入会金が異なりますが、登録免許税などと合わせて30万円前後となります。
行政書士資格の有効期限
一度行政書士試験に合格すれば、その合格は一生有効です。ただし、行政書士として業務を行うためには行政書士会への登録を継続している必要があります。
登録を抹消した場合は、行政書士として業務を行うことはできませんが、再度登録手続きを行えば、資格が復活します。
まとめ
今回の行政書士法改正は、補助金申請支援の透明性と信頼性を高め、事業者の方々がより安心して制度を利用できるようにするためのものです。
もし、補助金活用や申請支援に関してご不明な点があれば、お近くの行政書士や中小企業診断士にご相談されることをお勧めします。
最後に、実は私は行政書士試験に合格しているのですが登録はしていません。これを機会に登録について調べてみたのが、今回の記事を書き始めたきっかけです。
ということで、今回はここまで。