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こんにちは、柴山です。
補助金の審査に通る事業計画書には、「この投資は有望か?」を判断できるだけの材料が詰まっていなければなりません。その際、判断材料として重視されるのが「市場分析」です。
本記事では、補助金申請の実務に活かせる3C分析やSWOT分析と、事業計画の整合性の重要性を、実例を交えながら解説します。
なお事業計画書にどのような項目があるかについては、こちら の記事をご覧ください。
なぜ市場分析が重要なのか?
市場分析は、
- なぜその事業が必要なのか
- 成功の見込みがあるのか
といったことを客観的に説明するための土台です。
これが不十分だと、審査員にとっては
この会社が補助金を使ってまで新事業をやる必然性が分からない
となってしまいます。
一方、記載されている市場分析と新事業の間に整合性があれば、事業計画書には自然と説得力が生まれるはずです。
実在の企業で見る3C分析とSWOT分析
代表的な分析手法である3C分析、SWOT分析について、実在の企業を元に解説します。
トヨタ自動車で見る3C分析
3C分析は、Customer(顧客・市場)、Competitor(競合)、Company(自社)の3点から市場を俯瞰的に捉える手法です。
◯ トヨタ自動車の場合
| Customer(顧客・市場) | SUVやピックアップトラックへの需要、EV市場拡大、環境配慮意識の高まり |
| Competitor(競合) | ホンダなど国内自動車メーカー、ドイツの高級車メーカー、テスラ・BYDなどEV専業メーカー |
| Company(自社) | トヨタとレクサスの2つのブランドを保有したフルラインナップ戦略、信頼性と耐久性、ハイブリッド車の開発力 |
ここからトヨタ自動車について考えてみると…
トヨタ自動車はフルラインナップ戦略(全方位戦略)を採用していることにより、開発した技術を多くの車種で活かすことができます。その反面、あらゆる車種カテゴリーにて世界中の競合企業と戦う必要がある、というのがトヨタ自動車を取り巻く市場環境と言えます。
スシローで見るSWOT分析
SWOT分析は、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つの視点から整理し、戦略の方向性を明確にします。
◯ スシローの場合
| Strength(強み) | オペレーションの効率、価格競争力、ブランド力 |
| Weakness(弱み) | 食材価格への影響を受けやすい、FC展開の限界 |
| Opportunity(機会) | インバウンド回復、寿司人気の海外展開 |
| Threat(脅威) | 原価高騰、ライバルの参入(くら寿司・はま寿司など) |
ここからスシローについて考えてみると…
低価格により人気を得てきた分、食材の高騰により価格を上げると消費者が離れてしまうリスクがつきまといます。価格以外で消費者から選ばれる理由(付加価値)を生み出せるかが今後の課題です。
架空の飲食店で事業計画書を考えてみる
次のような居酒屋A点があったとします。
A店の特徴と周辺環境
・駅から徒歩20分と離れている(弱み)
・新鮮な食材の仕入れルートと高い調理技術により地元客の支持を得ている(強み)
・店舗は広くなく座席数は少ない(弱み)
・最近駅周辺が再開発されて安価な飲食店チェーンが増えたせいか、A店の売上は下降気味である(脅威)
・飲食店チェーンへの対策として手頃な値段の「ちょい呑みセット」を試してみたところ、来客は増えたが客単価が下がり、また満席で座れず帰ってしまう客が目についた
・最近、低温調理メニューが話題になっており、A店でも常連客に試食してもらったところ好評だった(機会)
ここまでの情報を使って、A店にあった事業計画、そうでない事業計画を考えてみました。
A店の特徴にあった事業計画は?
事業計画:低温調理による新メニューの開発による高付加価値化
- 高単価料理で「客単価UP」=少ない席でも売上増を狙える
- SNS映え、特別感を打ち出し若年層の新規来店促進
- 食中毒リスクを管理するため高度な温度管理ができる調理機器の導入を補助金でカバー
→ A店の強み(調理技術・仕入れ品質)により・市場トレンド・弱点対策が一体となっており、審査員に「筋が通った」計画として映る

自らの特徴を生かした事業計画で繁盛するA店
A店の特徴にあわない事業計画は?
事業計画:全品100円引きで集客強化+チラシ配布
- 客単価を下げても、席数に限界があるため売上総額はむしろ減少の恐れ
- 居酒屋の業態は回転率も低めなので「薄利多売」が成立しにくい
- 自社の強み(調理技術・仕入れ品質)を活かせない低価格勝負になってしまう
→ 自社リソースと戦略が噛み合っておらず、補助金の目的「生産性向上」から逸脱

低価格路線に走ってしまい、利益が出ず苦戦するA店
どのようなポイントが審査されるか?
ここでは第18回 小規模事業者持続化補助金の公募要領を元にどのような観点から審査が行われるか、概略をまとめてみました。
基礎審査
以下を全て満たさない申請は失格となります。
- 必要な提出書類がすべて提出されていること
- 補助の対象となる事業として要件に合致すること
- 補助事業を実行するために必要な能力がある
- 小規模事業者の技術やノウハウ等を基にした取組であること
要件に合致するなどに加えて、該当の事業者の規模や能力的に非現実的な事業はNGということになります。
計画審査
以下の項目について総合的な評価が高いものから順に採択されます。
- 自社の製品・サービスや自社の強みや弱みも適切に把握している
- 経営方針・目標と今後のプランの適切性
- 補助事業計画の有効性
- 積算の透明・適切性
加点審査
賃上げであったり、女性活躍推進法に基づく「えるぼし認定」を受けているなど、特定の政策的な観点から加点が行われます。
分析と戦略がかみ合ってこそ「説得力」が生まれる
補助金申請のために事業計画書を作り始める際、
設備投資したいだけなのに、なぜ長々と市場や自社の分析について書かなければはならないのか?
といったことを考える方が多いかもしれません。
しかし前述の審査項目を考慮すると、市場分析あってこその事業計画だと言うことがお分かりいただけるかと思います。むしろ補助金申請にあたって事業計画書を作ることは、自社の置かれた状況を冷静に考える良い機会になるのではないでしょうか?
市場分析を通じて、「なぜこの事業をやるのか?」「なぜ成功できるのか?」を論理的に説明できれば、確実に採択に一歩近づくけるはずです。

