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こんにちは、柴山です。
補助金を管轄する主な省庁である経済産業省および中小企業庁は、
補助金なんて税金の垂れ流しだ!
などの非難を受けないように、制度作りに心を砕いています。
そこで不正防止のために厳格な審査を行うのはもちろんとして、多数の申請(応募)に対して
- 事業として「実行可能性」があるか?
- 企業の中長期的な成長・発展につながるか?
- 従業員の待遇改善(賃金上昇や残業削減)につながるか?
- 地域経済への波及効果はあるか?
- 市場・顧客のニーズに合致しているか?
- 「補助金ありき」の事業になっていないか?
といった観点からチェックを行っています。
これは言い方を換えれば、
得するのが事業主だけ、あるいは補助金をもらうことだけが目的の事業計画になんぞ、税金は使ってやらん!
ということであり、その逆、つまり上の条件を満たす申請ほど採択を受けやすいということになります。
そこで今回はあらためて、「補助金の採択を受けるにふさわしい事業とはなにか?」について考えてみます。
その事業は企業の中長期的な成長・発展につながるか?
まず最も基本となるのが、これ~行おうとしている事業が、会社の将来につながるかどうかです。
短期的な売上が増えるかどうかよりも、
- 競争力が高まるか
- 弱みや構造的な課題を解消できるか
- 持続的な成長につながるか
といった中長期的な視点が重視されます。
ここで使われるのが、
SWOT分析や課題分析です。
SWOT分析について詳しくは以下の記事をご覧ください。

とある企業の例①
架空の小規模の事業者の例を考えてみました。
とある製造業者では、「高精度の金蔵加工技術」という強みを持ちながら
「人手不足で生産量が頭打ち、採用募集をかけても知名度が低く経験者が集まらない」
という課題を抱えていました。
この会社では単に「売上を伸ばしたいから設備を入れる」ではなく、
〇属人化した作業工程
〇ベテラン作業員に依存した体制
〇教育制度の不備
といった課題を整理し、
設備投資と同時に生産体制全体を改善する
という位置づけで事業を検討、未経験者でも短期間で戦力にできる生産ライン構築を目指すことにした。
このように事業計画書で求められるSWOT分析や課題分析の記述は
なぜこの事業が会社の発展につながるのか
読む人が理解できるように整合性を持たせる必要があります。
従業員の待遇改善につながるか?
補助金の出どころは国や自治体の予算、つまり税金です。
そのため、「従業員への波及効果」は非常に重視されます。
特に賃上げについてはほとんどの補助金で「●%以上の賃上げ目標を設定すること」といった条件が設けられており、それ以外にも
- 残業時間の削減
- 作業負担の軽減
- 働き方の改善
といった点も評価対象になり得ます。
とある企業の例②
とある飲食店では、以下のように現場が疲弊していました。
- 来客数は充分あり、現場は既にフル稼働している
- しかし客単価と利益率が低いので賃金は低い
- 待遇面での不満から離職者が多く、残ったスタッフの負担が過大である
そこで店主は2つの方向性を考えました。

方向性 その1
補助金を使ってさらに来客を増やすための広告を打つ。利益率が低くいのは相変わらずでも、売上が増えればきっと賃金を上げられるはず。

方向性 その2
補助金を使って客単価および利益率が高い新メニューを開発、同時に安さよりも味を求める顧客層に向けて広告を打ちたい。これにより店全体の利益率が改善されれば、賃金も上げられるはず。
この飲食店の課題解決につながる事業の方向性は、もちろん②です
周知のように現代の日本では生産性の向上や労働者の賃金上げが課題となっています。このため国が補助金を払ってでも支援すべき新事業としても②の方がふさわしい、ということになります。
地域経済への波及効果はあるか?
多くの補助金では、「地域経済への貢献」も評価項目に含まれます。
といっても、大規模な地域活性化は中小企業には不可能であり、現実味が無いことを事業計画書に書く必要はありません。
とはいえ
- 地元の産業への貢献
→食材の地産地消など - 地域雇用の維持または新規雇用の促進
→地域の高齢者を積極的に雇用するなど - 地域課題への間接的な貢献
→土地の流通を促進し、空き家問題の改善につながるなど
こういった自社の事業により地域にもたらされる好影響については積極的に記載すべきです。
市場・顧客のニーズに合致しているか?
補助金を獲得するうえで奇抜なアイデアなどは必要なく、重要なのは
本当に市場や顧客に求められている事業かどうか、
そして
国から見て応援したくなる事業かどうか
です。
例として
- その製品またはサービスの需要は増えているか
- 既存の設備を単に置き換えるだけではないのか
- 既存製品やサービスを単なる代替品ではないのか
- なぜ自社がやる意味および勝算
こういったことをきちんと説明できるかどうかが重要です。ネットで検索してみると市場調査会社のレポートが見つかる場合が有り、該当分野での市場の成長見込みなどは大変参考になります。
補助金申請のために話を盛るのではなく、分析に基づいて自社がその事業を行う必然性を説明することが大切です。
実行可能な事業か?
審査において実行可能性が低いと判断されれた事業計画は採択されません。
このため審査では、
- 現在の人員・体制で無理はないか
- 実行に必要なノウハウはあるか
- 資金調達に無理はないか
- 補助事業期間内に完了できるか
といった点がチェックされます。
なお補助金では事業に必要な全額をもらえる訳ではありません(下記記事を参照)。自己資金または借入金による資金調達が必要になるため、その意味でも無理のない事業計画が必要です。

補助金ありきになっていないか?
最後に、補助金審査で嫌われやすいのが「最初から補助金ありき」の事業、つまり自力のみだとしたら最初からやる気がない事業です。
評価されやすいのは、
- もともとやるべき・やりたかった事業である
- 資金面やリスク面がネックとなり、どうしても踏み切れなかった
- 補助金があれば資金不安が解消され、実行することができる
という構図です。
あくまで補助金はそれを獲得すること自体が目的ではなく、やりたかった事業を実現する手段です。
いい加減な経営者:
別にこの事業を本気でやりたかった訳じゃないけど、補助金とかいうのを貰えるらしいから、ダメもとで申請してみっか!

このような思惑が透けて見えるような申請では、まず採択されません。
要注意!「補助金ありき」の失敗事例
「新しいことをやれば補助金が通りやすい」という思い込みには罠があります。ここでは、実際にありがちな2つの失敗例を見てみます。
失敗例①:強みを無視した「流行りもの」への飛びつき
ケース:本業が印刷業のB社
- 計画: 印刷需要が減っているため、補助金を活用して「高級食パン店」をオープンする。
- 結果: 採択はされたものの、パン作りのノウハウも、飲食店の接客経験も、立地選びの知見もゼロ。結局、既にブームが去っていた市場で競合店に勝てず、わずか1年で撤退。
- なぜ失敗したのか?: 市場分析が浅く、自社の強みも全く活かせていなかったため。
失敗例②:補助金に目がくらんだ結果、倒産危機に
ケース:金属加工業のC社
- 計画: 補助金により大型設備(1億円)を導入し、生産性を一気に上げようとした。
- 結果: 補助率が2/3だったので「3,000万円強で買える」と安易に考えて導入。しかし大型設備を活かせるような受注が進まず、設備の維持費が経営を圧迫して倒産危機に。
- なぜ失敗したのか?: 設備を導入したものの、それを活かせるだけの営業力が伴わなかったため。
失敗例①②とも架空の事例ですが、実際に補助金をきっかけに倒産してしまった企業もあるようです。このようなことにならないよう、慎重に事業計画を検討する必要があります。
政策目的に合致した事業とは?
以上のように補助金にふさわしい事業とは、単に「儲かる事業」ではありません。自社の利益だけでなく、顧客の利益(ニーズ充足)、社会の利益(政策目的)にも合致している事業が最も採択されやすいと考えられます。
つまり、自社、顧客(市場)、社会(政策目的)の「三方よし」の関係が構築される事業がベストです。なお最後の政策目的については「中小企業白書」等に目を通すことでヒントが得られます。
「中小企業白書」に目を通す時間が無いという方向けに、最近の中小企業政策の重点課題をピックアップすると
- 省力化・省人化・DX推進
少子高齢化・採用困難による人手不足への対策、効率化 - 事業承継・第二創業
黒字であるにもかかわらず跡継ぎ不在による廃業を回避、経営資源を次世代に残す - 価格転嫁・取引適正化
→中小企業の下請け脱却・利益確保を後押し - 脱炭素や省エネ・GX推進
→環境問題への取組み - 賃上げ
→従来より賃金上昇は日本の課題
こういった国が重点的に推し進めようとしている政策に合致した事業は採択される可能性が高くなります。
まとめ:補助金にふさわしい事業とは?
最後に、補助金の採択を受けやすい事業の特徴についてまとめてみました。
- 自社の強みを活かし会社の将来につながる
- 従業員の働き方の改善につながる
- 地域や社会に好影響をもたらす
- 市場や顧客に求められている(ニーズがある)
- 実行できる現実的な計画である
- 補助金ありき、の事業ではない
- 賃上げなど政策目的にも合致している
採択される可能性を高めるために、このように多面的な視点から審査されることを踏まえて事業計画書を作成することが有効です。
また事業計画書の作成過程において
「この事業は、仮に補助金が無かったとしてもやるべきだろうか?」
そのように経営者が自問自答すること自体が、会社を一段と成長させるプロセスになるかもしれません。

