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こんにちは、柴山です。
前々回、前回の記事(以下)に続き、新事業進出補助金について、あらためて「新事業とは?」の視点から解説します。


とある新事業の相談
以下のような設定にて「新事業とは?」について考えてみます。
登場人物と状況
- Aさん:イチゴなどを生産する農家(農業法人)の跡取り
オープン予定のスイーツ店の初代店長候補 - Bさん:新事業進出補助金に詳しい外部専門家

新事業案:自家製果物を使ったスィーツ店をオープンする
Aさんの実家は農業法人で、長年イチゴや季節の果物を生産・出荷してきました。
ある日、Aさんはこう思います。
「ウチの農場で生産した果物を使って、スイーツ店をやってみたい!」
相談その①「これ、新事業に該当しますか?」
Aさん
「新たに店舗を借りて、自分たちの果物を使ったスイーツ店を開こうと思っているんです。これって新事業進出補助金の対象になりますか?」
Bさん
「まず確認したいのは、今まで何をやっていて、これから何をやるのかですね。」
Aさん
「今までは基本的にBtoBでの出荷が中心です。飲食店や青果市場向けですね。」
Bさん
「今回のスイーツ店は?」
Aさん
「一般のお客様向けです。加工して、店頭で直接販売します。」
Bさん
「それなら、新事業性は十分に説明できそうですね。
農産物の生産・出荷 ⇒ 一般消費者向けの加工・小売への進出ですから。」
相談その②「それ、誰でもできませんか?」
話が進む中で、Bさんは少し厳しい質問をします。
Bさん
「ところで、そのスイーツ店、他の人でも簡単にできたりしませんか?」
Aさん
「……どういう意味でしょう?」
Bさん
「農家がスイーツ店をやるというだけでは、新事業の特徴としては弱いかもしれません。」
Aさんは少し考えます。
Aさん
「お店では完熟させた果物を使おうと思っています。」
Bさん
「それは強みですね。それをどう活かしますか?」
Aさん
「完熟させた果物は日持ちしない分、出荷には向きません。でもお店でスイーツに加工するなら、一番おいしいの旬の味として提供できます。」
Bさんはメモを取りながら言います。
Bさん
「それです。自社ならではの強みが見えてきましたね。」
相談その③「新事業は課題解決とつながっていますか?」
次に話題は、会社全体の話になります。
Bさん
「ところで、今の農業法人としての課題は何ですか?」
Aさん
「正直、価格は市場に左右されますし、パートの方を雇う上で繁忙期と閑散期の差がネックになってます。」
Bさん
「スイーツ店は、その課題とどうつながりますか?」
Aさん
「付加価値が高い商品を自分たちで価格を決めて売れます。年間を通じた雇用も考えやすくなります。」
Bさん
「いいですね。やりたいからやるではなく、課題を解決するための新事業になっています。」
新事業進出補助金では、新事業が重視されます。
その④「ライバルは調査済み?」
Aさん
「だんだんと、ポイントが整理されてきた気がします。」
Bさん
「どんどん進めていきましょう!ところでライバルは調査済みですか?」
Aさん
「つまり、他のお店のことですか?」
Bさん
「そうです。よそのスィーツ店がどんな商品を、どのくらいの価格で販売しているかなど、競合を知らずに差別化は語れません。」
Aさん
「正直、ウチはウチだから…、みたいに思ってました。あと、お客様に喜んでもらえるように値段は抑えめでと考えています。」
Bさん
「お客様に喜んで頂きたいと考えることはもちろん大切です。ただ安くすると言ってもコンビニやスーパーに置いてあるスィーツと価格で勝負するのは厳しいのではないでしょうか?」
Aさん
「それは確かにそうです。でも、どうすればいいのでしょう?市場調査とかピンとこなくて。」
Bさん
「今回の場合は大がかりなリサーチまでは必要ありません。ただ、お客様目線で地域の他店を調べるくらいは必要です。そうすることで自分たちがやりたいこととの違いが見えてくる場合があります。
例えば、
- 近隣に何店舗あるか?
- 価格はどのくらい?
- 人気商品は?
- イートインスペースはあるか?
- ホームページや広告はどのようなものか?
- クリスマスなど季節イベントは?
こういったことは確認しておきたいですね。」
その⑤「差別化ポイントは?」
Aさん
「イートインいえば、周囲のお店はみな店内にスペースがありますけど、ウチが借りる予定のお店にはそこまでの広さはないんです。そこでカウンターで立食スタイルのケーキバイキングはどうかと思っています。」
Bさん
「それは面白いアイデアですね!
立食スタイルにすることで、
- スペースを節約
- 滞在時間を抑えて回転率アップ
- セルフサービスにより店舗スタッフの手間を減らせる
⇒農場に人手が欲しい時期でも店舗を回せる
といったメリットをがありそうです。
その代わり
- 立食スタイルはファミリー向きではない
というデメリットがありそうですが、どうでしょう?」
Aさん
「確かにメリットだけでは無さそうですね。もう少し考えてみます。」

立食ケーキバイキングは成功するか?
スタッフの動きや会計の仕方など、店舗オペレーションを吟味する必要があります。
その⑥「自分たちが儲かるだけではダメ?」
Bさん
「ところで、この新事業が地域にもたらす好影響は想定できますか?」
Aさん
「え?例えばどんなことですか?」
Bさん
「そうですね。例えば今回のスィーツ店なら、
- 地元産の原材料を使う
- 雇用を生み、地域に働く場を作る
- 空き店舗を活用し、住宅街のにぎわいを生む
こんな感じでしょうか。」
Aさん
「確かに、ウチの農場以外で取れた地元の果物も使う予定です。でもスィーツ店1つの社会的影響なんて微々たるものじゃないかと…」
Bさん
「それでも影響がゼロというわけではありません。誇張する必要はありませんが、想定できる地域貢献は事業計画書に載せていきたいですね。」
その⑦「ホントに実行できる?」
Bさん
「行政からすると、せっかく補助金を与えた事業者があっさり倒産してしまっては一体なんのための補助金?となってしまいます。」
Aさん
「それはそうですね。でも結果的に上手くいくかはやってみないと分からいのでは?」
Bさん
「もちろん、未来のことは誰にも分かりません。だからこそ実施体制の構想はとても重要です。
例えば
- 新事業に役立つノウハウを持っているスタッフを確保済み
- 店舗設計に実績がある建築事務所の目途がついている
などです。」
Aさん
「それなら、私は若い頃に広告代理店で働いていました。ホームページやチラシの制作は自分でやるつもりですが、これも実施体制に入りますか?あと店舗運営に詳しい知り合いがいてアドバイスをもらう予定です。」
Bさん
「広告や運営ノウハウはとても大事です。それもぜひ事業計画書に書きましょう!」
その⑧「結局、補助金を投入する価値はある?」
Aさん
「正直、最初は補助金が使えるならラッキーくらいの気持ちでした。」
Bさん
「多くの方がそうです。今はもう違いますよね。」
Aさんは頷きます。
Aさん
「はい。この事業に補助金を投入してもらうだけの価値があることを、もっと明確に言葉にできる気がします。」
Bさん
「良かったですね。完成度の高い事業計画書を作るには、最初にこの辺りを整理しておくことがとても重要なんです。」
注意!補助金は何にでも使える訳ではない
新事業進出補助金は原材料の仕入れには使えない
Aさん
「今回の新事業進出補助金、補助率が1/2で、上限も数千万円って聞きました。かなり大きいですよね。これなら原材料の仕入れにも使えそうだなと思っていて…」
Bさん
「そこ、実は一番誤解が多いポイントです。結論から言うと、原材料の仕入れには使えません。」
Aさん
「えっ、そうなんですか?自家製のフルーツ以外にも原材料があれこれ必要なので、その仕入れにあてようと思っていいたんですが…」
Bさん
「お気持ちはよく分かります。ただ、この補助金は新事業を立ち上げるための初期投資を支援する制度なので、運転資金は対象外です。」
補助金が使えるのは「投資的な経費」
Bさん
「新事業進出補助金で対象になるのは、
- 新事業専用の機械・設備
- 店舗や工場の建物費・内装工事費
- システム構築費(POS、予約システムなど)
- 広告宣伝・販売促進費(開業時のPRなど)
- 専門家への相談費用
…といった経費です。
特に、
①機械装置・システム構築費
②建物費(建設・改修など)
この①②いずれかは必ず補助金を申請する項目として必ず含まれていないといけないことになっています。」
Aさん
「なるほど…、最初に整えるものには使えるけど、日々回していくお金には使えないんですね。」
Bさん
「そうですね。広告費も補助金が使えるのは開業準備期間で使う分のみ、といった制限があります。
その他にも、人件費、水道光熱費、保険料や登記費用などの経費にも使えません。また、パソコン・スマホ・タブレット・社用車など新事業以外にも使えてしまう(汎用性が有る)ものも対象外です。
Aさん
「結構、制限が厳しいんですね…」
Bさん
「補助金が税金のムダ使いになってしまわないように、様々なルールが設けられているのは仕方ないですね。詳細は公募要領にて、しっかりと確認が必要です。」
事業計画書づくりは、ここからが本番
ここまで見てきたように、「新事業をやりたい」という思いだけでは、補助金獲得にふさわしい事業計画にはなりません。
計画を事業計画書へ落とし込む段階では、新事業について多面的な検討と整理が求められます。
たとえば、
- 新事業の内容
前述のスィーツ店の例であれば、店舗のレイアウト図や試作スィーツの写真があると説得力が増す。 - SWOT分析
自社の強み・弱み、外部環境の機会・脅威を整理し、なぜこの新事業をやる必然性があるのかを説明する。 - 売上の見込み(単価・客数・回転率など)
感覚的な数字ではなく、「どの前提条件で、どの程度の売上が見込めるのか」を論理的に示す。 - 市場分析・競合分析
その新事業に本当に需要があるのか、既存の競合とどう違うのか、勝ち筋はどこにあるのかを整理する。 - 営業開始までのスケジュール・必要な許認可
いつまでに何を行い、どの段階で売上が立ち始めるのか。
許認可や届出が必要な業種であれば、その取得時期も含めて現実的に示す。 - 実施体制(社内・外注先)
誰が責任を持ち、誰が現場を回し、どこを外部に任せるのか。
「人」の面から見て、実行可能な体制になっているかを明らかにする。
事業計画書のフォーマットをきちんと埋めるためには、思いつきを文章にするのではなくこうした検討が必要です。事業計画書やSWOT分析については以下の記事をご覧ください。


まとめ
あらためて事業計画書を作成するためのポイントをまとめると、
- 新事業と自社の強みや課題との関連性が重要
- 新事業が有望であることを売上見込などの数字で説明する必要がある
- 市場分析・実施体制・スケジュールなどの説明も必須
事業計画書とは、事業の有望性・実行可能性を審査員に示すためのプレゼン資料です。採択を勝ち取るためにも、形式的に書式を埋めるのではなく自社が新事業を行う必然性を伝えきる必要があります。
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