こんにちは、柴山です。
「言わなくても分かるでしょ」
「普通そのくらい察してよ」
そんな上司の態度に、『何が正解なのか分からない』と感じて戸惑ったことはありませんか?
最近知ったのですが、「自分の気持ちや事情を周囲は察するべき」みたいな態度で人と接する方を
察してちゃん
と呼ぶそうです。
こういう方が昇進、上司にクラスチェンジした場合は、
察してちゃん上司
ということになります。
きっと、その職場には常に「空気を読むのが当然」 「こちらから質問するのはNG」みたいな雰囲気があることでしょう。
一方で、察して欲しい側の方からは
いやいや、社会人なんだから
上司の考えを察する能力があって当然だろ
という反論もあり得ます。
となると世の中には、
- 伝える側が配慮すべきだと考える人たち
=言わな分からんやろ派 - 伝えられる側が察するべきと考える人たち
=察して派
以上2種類の人がいることになります。
ちなみに私は指示が曖昧な上司に振り回された経験があるので、圧倒的に前者、つまり伝える側がしっかりすべき、という考え方です。
ということで今回の記事では、現在進行形で察してちゃん上司に振り回されている立場の人向けに、
◇なぜ「察してちゃん上司」は生まれてしまうのか
◇「察してちゃん」の特徴や心理とは
◇「察してちゃん」への対処方法、コミュニケーション方法
等々について、私なりの考えをお伝えします。そして、もしかしたら察してちゃん上司の中に潜んでいるかもしれない、ある「悪意」についても分析してみたいと思います。
この内容はおそらく、
- 自分は部下から「察してちゃん上司」と思われていないか
- 部下から「指示が明確でない」・「分かりにくい」と思われているのでは
といったことを心配している人にも役に立つはずです。
この記事が、ほんの少しでも職場の人間関係の改善やストレス軽減のお役に立てば幸いです。
「察して派」・「言わな分からんやろ派」それぞれの言い分
少し前に、SNSで話題になった投稿がありました。
それは、ある男性からのもので
妻から
”「 ぽん酢」 を買ってきて”
と言われて、オーダー通り「ぽん酢」を買ってきたのに
”これじゃなくて「味ぽん」を買って来てほしかった”
と怒られた。
これって理不尽なのでは。
みたいな内容でした。
「ぽん酢」と「味ぽん」を間違えただけであれば、(普通の夫婦仲であれば)深刻な問題では無いはずです。
ですが、これが仕事上の依頼で
上司:月末会議の資料、いつものように準備しておいて
部下:分かりました。
会議当日:
上司:そういえば今日の会議、四半期だから役員も同席するのでよろしく。
部下:(それを早く言わんかい!)
…みたいな行き違いがしょっちゅう有ったら、たまってものではない、というか誰も得をしません。
この時の上司と部下の言い分を推測してみると
「察して派」(上司)の言い分
- こちらは多くの案件を抱えて忙しいので、一から十まで説明しなくても察して欲しい
- ビジネスの世界、大人同士ではこのくらい察するのが当然なのでは
- 説明が無くても状況から考えて動いて欲しい
- 自分が入社した時からの、言わば「社風」だから
複数の部下を抱えており、その分だけ多くの案件を監督しなければならない立場からすると
忙しくて説明の時間が無い
というのも分からなくはないです。
また、
同じ会社にいる上司の考えも察することができない奴に、クライアントの対応ができるか!
という考え方もあるかと思います。
「言わな分からんやろ派」(部下)の言い分
- 用件について詳細を把握しているのは依頼する側なので、情報を開示してもらわないと困る
- 断片的な指示ではなく、全体像を伝えて欲しい
- こちらに裁量があるかどうか、はっきりさせて欲しい
おそらく部下が言いたいことの筆頭は
我々は超能力者ではない
上司が部下に期待する能力はそういうこと(テレパシーとか)ではないはず
ということでしょう。
それでも「言わな分からんやろ派」の肩を持つ理由
この件に関して、私は最初に書いたように「言わな分からんやろ派」です。
世代、性別、育ってきた環境、職歴、その他バックグラウンドが異なる者同士で、最小限の説明だけであとは察しろ、というのはそもそも(というか絶対)無理があります。
そして、どんな案件であれ情報伝達の齟齬があった場合は、それまでにかけた時間と手間がムダになり、さらにリカバリーの必要があります。
これだけでも説明としては充分な気がしますが、ダメ押しとしてNLP(神経言語プログラミング)の考え方を借りてみます。
NLPの観点で見る「コミュニケーション不全」の主な理由
NLP(Neuro Linguistic Programming)とは、心理学、言語学、心理療法を組み合わせた実践心理学で、コミュニケーション能力や目標達成能力の向上に使われています。
その考え方の一部を借りると、
① 人は自分なりの地図(主観)で世界を認識している
人それぞれ、経験・価値観・立場・目標が違うため、同じ言葉でも受け取り方が異なります。
ありがちな会話の例:
上司の質問: このプレゼン資料、なんでこういう構成にしたの? (純粋に興味があって聞いただけ) | 部下A: 細部まで詮索するタイプの上司の元で働いた経験あり → 警戒モードに突入 | |
部下B: 上のような経験無し → 工夫した点を上司に気付いてもらえたと解釈 |
このように、同じ言葉であっても解釈する前提となる人生経験が異なれば受け取り方も変わります。
② 情報処理スタイルの違い(VAK)
NLPでは、人の情報処理スタイルを3タイプに分けます。
- V:視覚タイプ(見える形で理解)
- A:聴覚タイプ(言葉や音で理解)
- K:体感タイプ(感覚や感情で理解)
たとえば、上司が複雑な案件について伝える際、聴覚タイプの部下であれば会話だけで充分かもしれません。ですが視覚タイプの部下だと、文書化しないと上手く伝わらなかったりするので…
この人、頭はいいはずなのに、いつも指示の理解度が低い。
こちらの話をちゃんと聞いてないのでは?
…といった誤解が生まれる可能性があります。
私の感覚では、対人スキルに優れた営業タイプの方はA(聴覚タイプ)の方が多く、事務スタッフはV(視覚タイプ)が多い気がします。
③言葉よりも「非言語」の影響が大きい
NLPでは、コミュニケーションの93%は非言語(態度・声のトーン・表情など)だと言われています。
つまり、上司が何を言うかよりも、どんな態度で言うかが重要で、
部下:課長、相談があるので、お時間頂けますか?
上司:どうぞ、話してみて。
この時、上司がPCの画面の方を向いたままだったり、声のトーンから面倒臭そうなニュアンスが伝わってきた場合、部下は「なんでも相談しよう」という気持ちではなくなってしまうかもしれません。
上の①~③は、どこでも起こりうることだと思います。ということはやはり、最低限の説明で「察して」では常にトラブルが起こる危険をはらんでいるので、コミュニケーションにはそれなりにエネルギーを割かなければいけない、という結論になります。
経営理念はなんのためにある?
もう少し違う視点で「察して派」の人に質問をぶつけてみます。
それは、
あなたは社長の考えをちゃんと察している自信がありますか?
というものです。
社長が部長クラスに対して
部長ならワシの考えくらい説明せんでも察してくれるやろ
と考え、部長は課長に対して
察して当然
と考え…、以下同文。
これだと社長の考えが末端まで正確に届く可能性はほぼゼロです。
ですので一般的には、大企業ほど自社の経営理念、ビジョン、ミッションを明確にし、従業員と共有しようと努力しているように思われます。それはやはり、組織が大きくなるほど経営陣の想いが末端まで伝わりずらくなるからです。
参考までに言葉の定義としては以下のようになります。
- 経営理念の定義:企業が存在する根本的な価値観や信念。経営の土台となる考え方
- ビジョン:将来、企業が目指す理想の姿。中長期的なゴール
- ミッション:企業が今現在、果たすべき使命や社会的役割
トヨタの場合だと
- 経営理念(一部):内外の法およびその精神を遵守し、オープンでフェアな企業活動を通じて、国際社会から信頼される企業市民をめざす
- ビジョン:モビリティカンパニーへの進化
- ミッション:より良いクルマづくりを通じて、人々の生活の質を向上させる
極論かもしれませんが「部下は上司の考えを察するのが当然」という考え方は
俺は経営陣の考え方を察している自信がある!!
と、断言できる人が主張しない限り、根拠が弱い気がします。
「察してちゃん上司」の中に潜む悪意とは?
私が思うに、「察してちゃん上司」の主な類型は次の3つです。
- 指示は分かり易く明確にすべき、ということが理解できない
- 分かり易く明確な指示をする自信が無い
- 悪意を持って「察してちゃん上司」をやっている
①と②については、説明しなくても分かるかと思います。ということで問題は③です。
悪意その1:責任回避
どういうことかというと、
・上司が具体的で明確な指示を出し
・部下が指示通りに動き
その結果として上手くいかなかったら、それは上司の責任と考えるのが妥当です。
逆に言えば、わざと曖昧な指示をすることで上司は上手くいかなかった場合の責任を部下に転嫁しやすくなります。
私の考えとしては(読者の方も同意して頂けると思いますが)、これをワザとやっている人は、はっきり言って人の上に立つ資格はありません。
ありがちな会話としては
取引先:今回、御社に任せたイベント手配、いまいちだったかも…
課長(上司):申し訳ございません。任せたつもりだった○○が、まだ良く分かってなくて…
○○(部下):(自分が責任者なのに、俺のせいにしようとしている…!)
こんな感じになります。これは確信犯(意識的に)としてやってる人の他に、無自覚(無意識)のうちに自らの責任が問われないよう振舞っているタイプがいるように思われます。
悪意その2:優越感に浸りたい
このタイプも確信犯型と無意識型があると思います。これに関してはむしろ無意識型の方が多いかもしれません。
これも会話例を挙げてみると
上司:この資料、全然依頼通りになってないじゃないか!
部下:依頼は確か『前回と同じように』ということでしたが?
上司:はあ…(溜息)。いや、前回と違って役員の前でプレゼンするんだから、そこまで考えてくれないと。
やっぱり俺が自分でやった方が良かったな…。
部下:(そんなこと聞いてないし、これって自分が悪い…のか?)
心理的に、ここでの溜息は「お前なんにも分かってないな…」ということを間接的に伝え、上司の意図を汲まなかった自分が悪い、みたいな罪悪感・劣等感を部下に持たせる効果を持ちます。
こんなことをして何の意味があるのか、と普通の人なら考えるところです。
が、このタイプの上司にとっては
やっぱり俺って(ダメな部下たちに比べて)優秀なんだな!
…と、優越感に浸れるという大きなメリットがあります。
今、この記事を読んでいるあなたが真っ当な方であれば、やはり「そんなことに何の意味があるのか」と考えるはずです。しかし残念ながら世の中にはそういうタイプの人がいる、というのが私の結論です。
ある意味、このタイプの上司は自分の自尊心を保つために他人を踏み台にしていると言うことができます。
踏み台にされた側、特に新卒の方などが繰り返しこれをやられると自信の喪失につながるかもしれません。もし、これを読んでいるあなたがこのような言い方をする上司の元で働いているとしたら、自分を責めるのではなく
あ~、ダメ上司にあたっちゃったな~
と、適当に受け流してください。相手に非があるのに自分の責任のように考えていたら心を病んでしまいます。
「察してちゃん上司」との向き合い方
ということで、次に「察してちゃん上司」の対策編です。
とはいえ悪意を持って、しかも確信犯で「察してちゃん上司」をやっている人への対応は困難です。なぜなら本人は自分が得だからワザとやっているので、自ら「こんな自分を変えなきゃ」などとは絶対に思わないはずだからです。
あえて曖昧な指示をすることにより
- 上手くいかなかった際は部下に責任転嫁する
- 優越感に浸りつつ、マウントをとる
これらは実質的にパワハラと言っても差し支えないものです。
程度にもよりますが、こういう上司の元に配属されてしまった場合は人事への相談、さらに異動(転属願い)や転職を考える必要もあるかもしれません。
悪意がなければなんとかなる?「察してちゃん上司」対策
逆に言えば、悪意がない「察してちゃん上司」であればなんとかコミュニケーションをとれる可能性はあります(これも程度によりますが)。
私が意識していたのは
- 依頼された案件の目的や背景を確認する
- なるべく大枠を確認する
この2つです。
目的や背景を確認する
例えば
来期の事業計画について部を代表してプレゼンすることになったから、資料を作って
という依頼があった場合、まず考えるべきことは
どういう内容にすれば良いか、ではなく
そのプレゼンとやらは一体どんな場で、
誰が出席するのか
です。
よくよく聞いてみたら、「プレゼン」といっても立食パーティの場で来年の抱負を5分ぐらい語るだけ、ということだって絶対無いとは言い切れません。
この例を読むだけだと馬鹿みたいに思えるかもしれません。が、説明が足りない上司は、目の前のやって欲しいことだけ指示して全体像の説明を省略する傾向があるので、このレベルの事故が実際に起こります。
なるべく大きな枠で全体像を確認する
結局これも、「目的や背景を確認する」と同じことなのですが、とにかく重要な情報が省略されている可能性を疑います。
私は分譲住宅を販売するための広告に関わっていたのですが…
とある住宅会社の販売計画の例:(細かいことは省略)
クライアントの事情①:今期の売上が足りない
↓
クライアントの事情②:今期の売上にできる完成済みの物件から先に売りたい
↓
クライアントの事情③:完成済みの物件は立地があまり良くないので、大通り沿いにあるモデルハウスにいったんお客様を集め、建物の良さをアピールしたい
↓
クライアントから依頼を受けた上司の指示:モデルハウスに集客するためのポスティング手配を行って欲しい
①~③の事情を分かった上でポスティングツールを制作するのと、そうでないのとでは制作物の内容が違ってくることは、広告に関わったことが無い方でも容易に想像がつくと思います。
(例:多少の出費があっても今期のうちに売れれば良い、ということなら『●月〇日までに申し込んだ方には家電をサービス!』と入れるなど)
これらの対策のメリットは?
上司からの指示について目的・背景・大枠を確認しておくことのメリットは、大きな方向性の見当がつくことです。
上に挙げた広告の例だと、
売りたいのはモデルハウス自体じゃなくて別の○○物件らしいぞ
ということが分かっていれば、足りない情報があっても想像力で補うことができます。
あるいは、想像力で補いきれないことがあっても正解との誤差は割と少ないものになります。
このやり方のネックは、上司から「○○をやっておいてくれ」と言われた際に、「なんでやるんですか?」とストレートな聞き方をすると、「なんか反抗的だな、コイツ」と思われる可能性があることです。
なので、面倒くさいですが言葉は選ぶ必要があります。
こちらからの質問主導で進めるのも有効
これまでのやり取りにより
この人の説明には毎回致命的なレベルで大事な情報が抜けている
ということが既に分かっている相手に対しては、「相手から説明してもらう」のではなく「こちらから質問して答えてもらう」方法が有効です。
取材というか、インタビューを行うようなイメージで、
- 今回の案件は○○ということですね?
- この件に関わるスタッフはどなたですか?
- ○○をすることによる目標はなんですか?
- 決裁権はどなたにありますか?
などなど、相手の説明能力に期待するのは最初からやめてしまい、こちらからの質問により内容確認を完結させる方法です。とはいえ、「察してちゃん上司」はこれをやられるのを嫌がる可能性もあります。
こちらからすれば
誰の為にやってあげてると思ってんだ!?
と言いたいところですが、そこは我慢して
後から課長にお手間をとらせたくないんで、お願いします!
…みたいなことを言って、その場はなんとか取り繕いましょう。どのみち、案件が無事に着地できればそれでOKなのですから。
ここがポイント!
「察してちゃん上司」は情報の伝達を面倒くさがることにより、
・やって欲しい直接の作業だけを伝えて
・なんのためにそれが必要なのか全体像の説明を省く
という傾向があります。
依頼されたことについて、まず目的・背景・大枠といった全体像の確認をしましょう。先に細部に意識が行ってしまうと、ハマってしまう可能性が大です。
それでも「察して欲しい」方へ
ここまで「察してちゃん上司」への対処方法は、間接的に「察して」が周囲の人に大きな負担をかけることの説明にもなっていると思います。
それでもなお、察して欲しいという人がいるかもしれませんので、曖昧な指示による悪影響を改めてまとめます。
- 混乱と不安: 何をすべきか分からず、業務に集中できない。
- モチベーションの低下: 度重なるダメ出しで、仕事への意欲を失う。
- 時間の浪費: 手探りで作業を進めるため、無駄な時間と労力が発生する。
- ミスの増加: 指示の意図を正しく理解できないため、ミスが発生しやすくなる。
- 上司への不信感: 上司の指示能力に疑問を持ち、信頼関係が損なわれる。
さらに、最初にきちんと伝えなかったことにより、上司も部下から質問があるたびに自分の業務を中断しなければなりません。また上司不在で確認がとれない際は、その案件が停滞してしまうことになります。
つまり、控えめに言って大迷惑ということです。
「私は部下の自主性に任せたいんだ!」という場合
上司の立場にある方が
そうはいっても部下1人1人に時間を割けない
という場合や
部下の成長に期待して細かいことは任せたい
という場合については
上の「察してちゃん上司」対策などで書いたことを応用してください。
つまり案件を部下に任せる場合は、
全体像についてしっかり説明の上で、細部については裁量を与えることをはっきり伝える
これを筆頭にして
- 経過報告をどうするか、ルールを決める
- 部下からの報告に対して必ずフィードバックすることを約束する
- 責任は自分(上司)にあることを明言する(←これ大事!)
この辺りをきちんとしておけば、細かい説明に時間を取られることも防げます。逆に言えば裁量を与えることを明確に伝えていないのに「自主性に期待する」というのは物凄く身勝手な、酷い話です。
こうすることによって、あなたに対する部下からの評価は「察してちゃん上司」ではなく「任せてくれる上司」へと変わるはずです。
補足:「私の気持ちを察して」タイプ
前半で「察してちゃん上司」の類型として
- 指示は分かり易く明確にすべき、ということが理解できない
- 分かり易く明確な指示をする自信が無い
- 悪意を持って「察してちゃん上司」をやっている
この3つを挙げました。これらは3つとも、業務上の指示が曖昧なタイプです。
これとは別に個人的な感情面について
みんな!私の気持ちや大変さを察して!
というタイプの方もいるようです。(上司、部下など立場に関係無く)
こういう方が同僚・部下の場合は、常に気にかけていることが伝わるように、まめに声掛けしていくのが対処法の1つです。(これは「察してちゃん」というより「かまってちゃん」だと思います)
一方、上司の場合は…、正直なところ分かりません。そういう方が部門長であれば、いずれ該当部署に問題が起こると思います。同僚と相談の上で、経営陣や人事などに報告すべきではないでしょうか。
歴史に見る「察して」の代償──インパール作戦の失敗
「察してくれなかった」──
これは現代の職場でも聞こえてきそうな言葉ですが、かつて「察して」により数万人の命を左右した事例がありました。
第二次世界大戦中の「インパール作戦」は、日本軍が英印軍に対してインド北東部に侵攻した大規模な軍事作戦です。
しかしこの作戦は、補給線の確保もままならず、現場では「無謀」と言われていたにもかかわらず、撤退の判断が遅れ、多くの兵士が命を落とすことになります。
作戦の責任者である牟田口廉也中将は、上層部に作戦失敗の実情を報告することなく、撤退の進言もしませんでした。
その理由の一つが、彼が後年に残したとされるこの言葉です。
「言わなくても、察してもらいたかった」
この言葉には重要な場面で「察し合い」に依存してしまった、日本軍のリーダーシップの脆弱さがにじんでいます。
こうして撤退のタイミングが遅くなった結果、現場では飢えと病に倒れる兵士が続出、ついには史上最悪の作戦と呼ばれる結末を迎えました。この作戦には8万人以上の兵士が参加、帰還できたのは約12,000人だったとのことです。
もちろん、インパール作戦の悲劇と職場の日常を単純に比べることはできません。ですが、「察してくれるはず」は、責任の放棄に繋がるという点では、共通しているのではないでしょうか?
※この章の内容はWikipedia等を参照しました。
せめて、自分は「察してちゃん上司」にならないように
今回は「察してちゃん上司」について、あれこれ書いてみました。
現実問題として、40代以上で考え方が固まってしまった、または固まりつつある人に「察して」はやめろ!と言っても、すぐに態度を変える姿はイメージできません。
なので、不本意ながら部下の方が頭を使って対応せざるを得ないことが多いと思います。そこで問題はその次、あなたが昇進した時に、ちゃんと部下とコミュニケーションを取れる上司になれるかです。
学校の部活でよくある、「先輩にされたシゴキを今度は俺たちが後輩にやってやろう」みたいなノリで、今度はあなたが「察してちゃん上司」になってしまわないことを祈ります。
ということで、今回はここまで。